双子モデルのAMIAYAは、原宿のストリートで誕生し、今や東京のファッションシーンと世界をつなぐ架け橋のような存在だ。2011年には、マークスタイラーから自身がクリエイティブ・ディレクターを務めるアパレルブランド「ジュエティ(JOUETIE)」を立ち上げ、10〜20代を中心に支持を集める。「ファッションを謳歌し、自由に表現する楽しさを届ける」ことをモットーに、ポジティブなパワーを発信してきた2人は、環境問題や人権問題など業界の負の側面への関心が高まる今、「私たちが発信すべき責任あるメッセージとは何か」を自問する。本連載では、AMIAYAがさまざまな角度からサステナビリティを学ぶ姿を追う。連載4回目は、廃棄直前のジーンズをリメイク販売する東京・足立区のプレス工場ヤマサワプレスを訪れた。今回は、実際にジーンズの解体作業などを体験した本人たちに寄稿してもらった。
私たちがサステナビリティに取り組む上で、アップサイクルやリメイクはキーワードだ。昔から古着が大好きで、リメイク品を集めたり、「ジュエティ」でもリメイクアイテムを作ったりしてきた。今回は、本来であれば捨てられてしまう「リーバイス」“501”ジーンズに、アイデアを加えて新しい価値を生み出すヤマサワプレスにお邪魔した。
ヤマサワプレスは、洋服が店頭に並ぶ前の検品やアイロン掛け、B品の修理といった作業を請け負うプレス工場だ。代表の山澤亮治社長が、工場を案内してくれた。ひとつひとつ丁寧に作業している現場を見ると洋服が完成し、お客さまに届けるまでの工程に関わる人の多さを実感する。清潔感のある工場内で作業する生き生きとした女性の職人さんたちの笑顔が印象的だった。
さて、ここから本題へ。デニムの保管室には、大量のデニムの塊があった。フルボディから、ショートパンツの流行でカットされた端切れまで全てが廃棄される予定だったと聞いて、とても胸が痛んだ。洋服が今なお大量に捨てられようとしていた現状を目の当たりにした。ヤマサワプレスでは、この膨大な数のデニムを、目利きし仕分けながら1本1本手洗いで汚れを洗浄し、解体・補修し、新しいプロダクトに生まれ変わらせている。
幼い頃から古着に触れて育ったと話す山澤社長は無類の古着好きだ。2019年にロサンゼルスに渡ったときに、廃棄される直前の大量のデニムに出合った。全てが「リーバイス」の“501”ジーンズだったそうだ。山澤社長は、「初めて買ったデニムが“501”だったので、どこか使命のようなものを感じた」と話す。全て捨てられてしまうのは胸が苦しいと合計20tのデニムを買い取った。20tのデニムを買い取るなど決して誰にでもできることではない。山澤社長を動かしたのは、ファッションを愛する気持ちだったのだと思う。
私たちも作業の一部を体験させてもらった。まずは解体。ベルトループ、ウエスト、ポケットと順に糸を切ってバラしていく。この時、表生地を傷つけないように注意しなければならない。ハサミとリッパーを使い、丁寧に解体する作業は、無駄な部分を出さないよう細心の注意を払いながら行う。全てのパーツに新しい息を吹き込む重要な工程で、想像以上に集中力がいる。
続いて屋外での洗浄。長テーブルに洗浄するデニムを配置して、汚れの部分に洗浄液を吹きかけ、馬毛のブラシでトントンとたたき、汚れを浮かしてからブラシでこする。特に汚れが目立つポケットの部分や裾の部分を念入りに洗浄する。1本にかける時間は状態によって異なるが、かなりの労働力だ。オリジナルの洗浄液は、デニムの色落ちやダメージを防ぐため、環境に配慮した成分で開発したそうだ。
幸い、私たちが体験した日は6月の曇り日、作業がしやすい天候だったが、職人さんたちは真夏の8月も、凍える真冬の1月も、同じように作業しなければならないと思うと、自然と背筋が伸びた。
「廃棄されるデニムを、誰かに愛されるアイテムとして紡いでいきたい」という山澤社長の言葉が印象的だった。サステナビリティは難しく考えてしまいがちだが、「何より大切なのは、ファッションを楽しむ気持ち」だと教えてもらい少し肩の力が抜けた。作業は大変だったけど、ファッションの持つパワーを改めて考える時間になった。
本来なら、捨てられてしまうはずだったモノにアイデアを加えると新たな価値が生まれ、循環していく。サステナブルを学ぶことで、新たな価値観や選択が増えていくことを自分たち自身が実感している。今回の訪問でこれからのモノづくりや発信のヒントをたくさん得られた。私たちもファッションを通してポジティブなパワーを届けるという、本来の目的を見失わないように今回感じたことを、自分たちの方法で発信していきたい。