ジャパンサステナブルファッションアライアンス(以下、JSFA)は6月30日、第2回総会後に記者会見を開き、昨年11月に発表した目標「ファッションロスゼロ」「カーボンニュートラル」の進捗を発表した。共同代表の伊藤忠商事、ゴールドウイン、JEPLAN(ジェプラン、日本環境設計から社名変更)に加え、来年度から共同代表となるアダストリアの担当者が説明した。
JSFAは2021年8月に設立し、現在は正会員19社、賛助会員25社から成る。設立後は毎月の定例会や勉強会に加え、「政策提言委員会」「技術開発のための環境整備委員会」「コミュニケーション(PR)委員会」を設けて活動している。
11月に掲げた目標「ファッションロスゼロ」「カーボンニュートラル」に向けてまずは現状把握のために、各社にアンケートを実施。そこで見えた課題を踏まえ、今後のロードマップを策定する段階にある。4月には政策提言を行っている。また、「人権・ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)」も対象とする検討を始めた。
ファッションロスの現状については、把握すべき項目を自社調達の①原材料②副資材③原料、④回収資源⑤製品在庫、に整理。アンケートを実施したものの、個社で開示することのリスクや独占禁止法への抵触の恐れといった課題が浮かび、現状把握そのものが難航。現在、公正取引委員会、弁護士、各省庁への相談を進めている。
温室効果ガス排出量の現状については、スコープ1、2、3の把握状況について2月に34社対象にアンケートを実施。「把握の対象範囲を決めているか?」の問いに対して16社が「決めている」と答えたものの、サプライチェーン全体の排出量の把握を意味するスコープ3までを把握した企業は3社にとどまった。これらから排出削減のプロセスの見える化やデータの正確性をあげて経営に結びついた削減活動、スコープ3の算出の難しさを踏まえ共通基準の設定といった課題を共有。パブリックパートナーである省庁などへ把握のためのデーターベースやツールの開発の協力、算出方法を簡素化するための統一化などを求めてゆく。
JSFAを構成するのは原料メーカー、商社、アパレル、ECプラットフォームと幅広い。成果について共同代表のひとり下田祥朗伊藤忠商事繊維カンパニーファッションアパレル第三部繊維原料課長は「場を設け、互いの生の声を聞き、課題が見えたことが大きな一歩。個社では届かない声も、業界として把握することで政策提言として国に届けることができた」と振り返る。課題については、「各社で基準が異なるなか、提言内容をいかに具体的なアクションにつなげてゆくか」(藤本朱美アダストリア経営企画室アシスタントマネジャー)が共通の認識だ。
高尾正樹JEPLAN社長は「何もないところから始め、あ~これは大変だ、というのが現状だが、やりがいのあるテーマ。排出量把握は、いずれ非財務情報として開示が求められることが予測される。スコープ3までしっかり把握できるという結果を出せたら(産業として)大きなインパクトが出せる」と話す。
ファッションロスに関して勝田悦弘ゴールドウイン管理本部ESG推進室はその成果を「定義づけと目指す先が明確になり、ファッションロスとは何かをぶれずに議論することができた」とした上で、循環利用のグランドデザインにつながる回収・分別の仕組み作りの目標に触れ「回収システムは一筋縄ではいかない課題。個社では解決できない課題解決に期待が寄せられている」とコメントした。
会員を希望する企業については事務局が個別ヒアリングを行っており事務局は「まだ何もできていないが加わっていいかという質問が多い。まずは状況をシェアして議論に加わってほしい」と呼びかけた。設立から1年弱。今はできていないことを数え上げるより、連携と現状把握、課題の整理、ロードマップの策定が優先といえるだろう。
【JSFA会員企業】
正会員19社:アーバンリサーチ、アダストリア、伊藤忠商事、倉敷紡績、クラレトレーディング、 ゴールドウイン、JEPLAN、鈴木商会、ZOZO、帝人フロンティア、TSI ホールディングス、東レ、豊島、福助、フルカイテン、丸紅、モリリン、ユナイテッドアローズ、YKK
賛助会員25社:旭化成アドバンス、アシックス、一広、カケンテストセンター、清原、cross Ds Japan、グンゼ、コーベル、サザビーリーグ、サルト、シキボウ、タカキュー、日華化学、日本化薬、日本生活協同組合連合会、日本繊維製品品質技術センター、ハイケム、バリュエンスホールディングス、フジックス、ブックオフグループホールディングス、ボーケン品質評価機構、メンケン品質検査協会、ヤマダヤ、リファインバース、良品計画