ファッション

「ロンシャン」が端切れを活用した新ライン カラーブロッキングが体現するサステナビリティ

 「ロンシャン(LONGCHAMP)」は7月19日、これまでの“ル プリアージュ(Le Pliage)”コレクションの製作時に余ったキャンバスの端切れとレザーのハンドル/フラップを活用した新ライン“ル プリアージュ リプレイ(Le Pliage Re-Play)”を発売する。日本でも長らく人気の“ル プリアージュ”から、新たにカラフルな3モデルをそろえ、「サステナブルをプレイフルに、クリエイティブに発信したい」との願いを込めた。ジャン・キャスグラン(Jean Cassegrain)最高経営責任者(CEO)に、新ラインが体現するブランドバリューや、2021年に策定したサステナビリティ施策の達成度などについて聞いた。

キャスグランCEOが語るブランド理念
歴史や品質への誇りが生むサステナビリティ

WWDJAPAN(以下、WWD):端切れを活用した“ル プリアージュ リプレイ”の開発のきっかけは?

ジャン・キャスグランCEO(以下、キャスグランCEO):誕生から30年ほど経つ“ル プリアージュ”は、その歴史の中でバリエーション豊かなカラーを取り入れてきた。もともと、“ル プリアージュ”コレクションは長く使っていただけることを心掛け、素材を無駄にしないことも意識してきた。それでもときには余ってしまうので、今回それをクリエイティブに生かせないかと考えた。メゾンとして初めて、異なるシーズンからの端切れのみを使った“ル プリアージュ リプレイ”が誕生した。

WWD:日本でも人気の高い“ル プリアージュ”の端切れを再利用することに抵抗はなかったか?

キャスグランCEO:「ロンシャン」は1970年代初頭に、初めてナイロンを使ってバッグを手掛けたメゾンの一つだった。父、フィリップ・キャスグラン(Philippe Cassegrain)は軽量で丈夫なナイロン素材に目をつけ、レザーとナイロンのコンビネーションバッグ“ル プリアージュ”をデザインし、93年に発売した。企業やブランドとしてサステナビリティに取り組むとき、まず考えるべきことは長く使える製品を作ることなのではないだろうか。“リプレイ”ラインの制作は「ロンシャン」だからこそできること。アイコニックなコレクションの歴史とアイテムの耐久性、メゾンの品質には自信があり、誇りに思う。

メゾン初、端切れのみを使った
“ル プリアージュ リプレイ”

WWD:“リプレイ”ラインはメゾンのバリューをどう表現している?

キャスグランCEO:バリューの中枢は、オーセンティシティーとエナジー。カラフルでポジティブな“リプレイ”は、特にエナジーが溢れている。サステナビリティについても、いつもシリアスで真面目にだけ発信しなくても良いはずだと信じている。プライフルなカラーブロッキングが並ぶダイナミックなデザインの“ル プリアージュ リプレイ”は、サステナビリティに前向きに取り組んでいきたいというメゾンのメッセージを体現するラインだ。

WWD:カラフルなデザインが特徴的だ。

キャスグランCEO:最初に“ル プリアージュ”を発表したとき、当初からバリエーション豊かなカラーを用意した。当時は黒いバッグが主流で、カラフルな選択肢は珍しかったという。コレクションのアイデンティティーである多様なカラーを使う姿勢は“リプレイ”にも受け継がれており、カラーブロッキングというデザインがそれを象徴している。素材を再利用するというサステナビリティへの貢献に加えて、その過程を楽しむような、プレイフルなビジュアルがまさにメゾンらしさを反映しているのではないだろうか。

WWD:“ル プリアージュ リプレイ”の特色は。

キャスグランCEO:“ル プリアージュ”は年代を超えて愛されており、誰もが手に取るバッグだ。ウィメンズでもメンズでも通用するデザインで、飛行機に乗ればビジネスクラスに座る人からエコノミーまで、幅広い層が使用する。あらゆる文化や社会にオープンで、ユニバーサルなデザインバッグに成長した。“リプレイ”もまた、エネルギッシュな性質を持っている。メゾンのバッグはトラベル用として知名度もあるし、1960年代にはいち早く空港にショップをオープンしている。バッグの持ち運びやすさや軽さはずっとコアに据えているもので、馬が駆け抜ける様子を描いているブランドロゴのようにエナジェティックさも兼ね備えている。“リプレイ”もあらゆる人に寄り添い、旅行や移動時に活躍するアイテムに育つだろう。

プレイフルなカラーブロッキングが
並ぶダイナミックなデザイン

WWD:2023年までに使用する全ナイロンを100%リサイクルナイロンに切り替えるとしているが、達成度は?

キャスグランCEO:目標は達成できる見込みだ。“ル プリアージュ”コレクションをリサイクルナイロンに切り替えることはもちろん、そのほか旅行バッグや裏地も変更していく。従来のナイロン製品と全く同じ品質のものを作りたかったので、リサイクル素材を提供するサプライチェーンが少ないことに苦労したが、耐久性も品質もこれまでのナイロンと同様の素材を吟味し、リサイクル素材で置き換えた。使用しているリサイクルナイロンは、使わなくなった漁網やカーペットなどを原料にしている。

WWD:レザーも同様に、23年までにレザーワーキンググループ(以下、LWG)の認証レザーに切り替えるとしているが、達成度は?

キャスグランCEO:LWGは独立した認証機関で、使用物質や労働環境まで、会社の設備や製造工程を審査するもの。21年時点で、99%の製品はLWG認証を獲得し、その半分余りはゴールド認証の取得を達成している。フランスやイタリア、オランダ、ポルトガル、ウルグアイなどに位置し長らく交流しているタンナー(製革業者)ともうまく連携して、押し進めている。

あらゆる人に寄り添う、
タイムレスでユニバーサルなバッグへ

WWD:新たなCSR指針のひとつに「製造と輸送時に発生するCO2排出量を削減」も掲げていた。実際削減できたことは?

キャスグランCEO:リサイクルナイロンを使用することで、まずは20%削減できた。従来の素材は石油由来だったので、切り替えるだけで削減につながる。力を入れているのはリペアサービス。過去の素材は全て管理しているので、最も古いコレクションも対応や代替案が提案可能だ。フランス国内では年間6万点以上を状態に応じて無償・有償でリペアしている。製品の輸送時に発生するCO2排出量は、航空から海上に切り替えることで最小限に抑えようと努めている。ファッションはオンタイムでトレンドを素早く提供することが鍵となることも多いが、われわれにはシーズンを問わないタイムレスなアイテムも多い。計画的な生産によってさらに可能になっていくだろう。

WWD:今後検討していく新しいCSR指針はあるか?

キャスグランCEO:製品の包装についてアップデートを進めている。FSC(Forest Stewardship Council)森林認証紙の使用をベースに、これまで樹脂などを使って紙の表面に加えていた加工を廃止して、持ち手部分もテキスタイルから紙に切り替えてリサイクルしやすくする。外箱に使用していたマグネットの留め具も取り除く予定だ。

問い合わせ先
ロンシャン・ジャパン
0120-150-116