日本橋三越が2022-23年秋冬紳士服のプレビューを行った。今季は“バックトゥドレス”をテーマに、素材と柄、パターンにこだわったオーダースーツと既製服をそろえる。
オーダースーツでは、1980年代の「グッチ(GUCCI)」のスーツをはじめ、アーカイブをサンプリングした新たなパターンを用意する。構築的なショルダーと大振りのラペル、ゆとりのある身幅でクラシカルな雰囲気だ。素材はウールのほかにカシミアやベルベット、細畝のコーデュロイをそろえ、カラーは柔らかなグレーをベースに、首元でグリーンや赤、オレンジなどを差す。
そもそもメンズ全体では、フォーマル市場は厳しい状況が続く。しかし、同店のような店舗には、それでもフォーマルが欠かせない人が来店する。山浦勇樹・日本橋三越本店本館2階パーソナルオーダーサロンバイヤー兼店長は、「今年に入り、スーツを着る機会は着実に増えており、数年ぶりに購入するお客様が多い。『どうせ買うならいい物を』というマインドも顕著で、50万円のジャケットなど高額商品もよく動く」という。
既製服では、ビンテージのツイード生地などを使ったジャケットやパンツを豊富にそろえる。重厚感がありながらソフトなタッチで、現行品とは異なる原毛の質感が楽しめる。既製シャツも強化し、老舗シャツ屋「チョーヤ(CHOYA)」はホワイト4種と、サックスブルー6種(それぞれ約3万円)を用意する。通常のシャツはパーツごとに異なる職人が縫製するが、同ブランドは職人1人が1枚ずつを縫い上げており、裾の細やかな始末や丁寧なステッチが魅力だ。
コンフォートなスーツ需要も継続していることから、ウエストにゴムを入れた既製服も出す。インナーはワイシャツではなく、ストレッチウールの長袖ポロシャツを合わせる。 「オンだけでなくオフにも使える洋服も用意し、365日をカバーする」との思いから、ハンティングジャケットのディテールを採用したアクティブな雰囲気のオーダーシャツもそろえる。素材は東レの“ウルトラスエード”から好みの色を選べる。
アクセサリーは、売り切れが続出しているという「ジョンロブ(JOHN LOBB(ジョンロブ)」の“シティーツー(CITY Ⅱ)”“フィリップツー(PHILIP Ⅱ)”“ロペス(LOPEZ)”の 3モデルを、サイズ5〜10までそろえる。また「大事な商談で使えるカバンは意外とない」という客の声から、カバンメーカーの大峽製鞄(おおばせいほう)と作ったオリジナルのブリーフケース(約20万円〜)も扱う。田中慎吾・日本橋三越本店本館2階紳士・紳士雑貨・紳士オーダーバイヤーは、「幅広いアイテムを扱うのではなく、特にニーズの高いアイテムと、正統派のアイテムに絞る。遊びはないかもしれないが、『ここに来れば安心して買い物ができる』というイメージを重視した。お客様もそれを求めている」と語る。
そのほか、シューズやバッグを対象としたリペアサービスの発信を強化する。これまでもリペアサービスは行ってきたが、物を長く使う時代に流れに合致し、客のニーズも高まっていることから、公式SNSを積極的に運営するなど露出を増やす。アッパーの色補修からソール交換、かかとの補修など幅広いメニューがあり、革靴はもちろんスニーカーにも対応する。2019年靴磨き選手権大会2位の岡嶋翔太氏をはじめ、本館2階に専任スタッフが常駐する。