撮影や取材を行う時に出演者やスタッフにお弁当として提供される“ロケ弁“。その日のモチベーションをさらに高めてくれて、ハードな現場でもおいしくエネルギー補給ができる賜物だ。ここ数年のテイクアウト需要の高まりで、お弁当を購入する機会が増えた人も多いはず。
ファッション業界で話題のロケ弁を紹介する本連載では、知る人ぞ知る人気店や注目の弁当店などの店頭販売も行う誰でも食べられるお弁当をセレクト。今回は懐かしさ感じる味や洋食にヒントを得た味など、趣向を凝らした創作和食の弁当6種類が登場する。味付けや彩り、盛り付けに秘められた技は誰にも真似できない。新たな好みが見つかるはず。
【アホウドリ】働く仲間にエールを送る満腹弁当
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7月からの新メニュー“マルシェ弁当”は店頭でも買いやすくて、食べやすいサイズがコンセプト。肉または魚のメインが選べ、雑穀米と野菜の惣菜たっぷりのヘルシー弁当。価格はそれぞれ税込1080円 PHOTO:YUKA FUJITA
常時7つのメニューを取りそろえる中、人気は“丸わっぱ弁当”(税込1620円)。箱の中でぎゅぎゅと重なり合うおかずの数は15品!7月16日には、“丸わっぱ弁当”の15品のレシピや詰め方をまとめた初のレシピ本が数量限定で発売する PHOTO:YUKA FUJITA
定番は人参しりしりやなす味噌、酢ごぼう、梅干しの天ぷらなど。「店がある以上、切っても切れない関係」という信頼する農家の新鮮な野菜をたっぷり使い、店頭販売の“ご近所弁当”で地域へ貢献している PHOTO:YUKA FUJITA
スタッフが作業する店内・調理場は、家庭的な味付けの弁当と同じく、アットホームな空間。調理未経験者も積極的に採用し、弁当作りのノウハウを教育している。チームワークを大事にしていて、社員で歌う社歌も作るという PHOTO:YUKA FUJITA
大阪芸術大学で映像を学んだ大石さんに最近のおすすめ映画を聞くと、「『ハケンアニメ』。おにぎりを握り、働く人の元へ駆けつけたくなる」という。「1人の時間ができたら『メタモルフォーゼの縁側』で癒されて『トップガン(Top Gun)』でテンションを上げたい!」 PHOTO:YUKA FUJITA
店舗は大石さんが上京して住んでいた要町に構える。古民家を改装したカフェを引き継ぎ、「アホウドリ」をスタートした。火曜日には農家をサポートするため、レストランクオリティーの無農薬・無化学肥料のオーガニック野菜を特別価格で販売している PHOTO:YUKA FUJITA
ドラマや雑誌の撮影、舞台稽古など多くの業界関係者の心とお腹を満たしているのが「アホウドリ」だ。好きな広告や映像の仕事についたものの、「虚弱体質で現場仕事についていけなかった」という主宰の大石真理子さん。「でも制作現場で働く友人たちにエールを送りたい」とロケ弁ケータリングを始めた。弁当作りは、大石さんが絵に描いて食材や彩りなどを考えることから始めるという。家庭的な味をメインにしつつ、「サプライズのある盛り付け」で食べる人たちを魅了している。「老若男女問わず、わぁっと喜んでお腹いっぱいになってほしい」と大石さん。具沢山のおかずと同じくらい、食べる人への思いを詰め込んでいる。
住所:東京都豊島区要町1-10-7 鯰の家1階
電話:03-5986-1087
時間:11:00~14:00(店頭受取)
定休日:土、日曜日・祝日
【秘密厨房】プロの技が光る味付けと食感の楽しさ
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ロケ弁で人気のボリューム弁当は、店頭での事前注文もOK。価格は税込1080円。メイン1種とおかず10種、混ぜご飯が入る。塩麹などでマリネしたローストビーフやキノコのテリーヌなど、イタリアンの技術を生かしたこだわりのおかずが入ることもある PHOTO:YUKA FUJITA
看板メニューの一つである“日替わり弁当”(税込810円)。この日は、パリパリに仕上げた照り焼きチキンや米粉で揚げたとうもろこしの梅ゆかり和えなどのおかずと、新ごぼうの混ぜご飯を詰め合わせた。当日のメニューはインスタグラムで掲示している PHOTO:YUKA FUJITA
食材は元シェフ仲間が営む農家や、近所の商店街にある魚屋や八百屋から仕入れている。大量に採れたズッキーニを引き取ったり、若手農産者の食材を積極的に使ったりと生産者のメリットになる取り組みを心掛けている PHOTO:YUKA FUJITA
必ずのせるという人参のラペはクミンシードを加えて、お米にも合うオリジナルの味付けにしている。一方混ぜご飯は旬な食材を使いつつも、主張しすぎないよう控えめな味に仕上げ、おかずとのバランスを整えているという PHOTO:YUKA FUJITA
近藤さんの長崎の実家は40年以上経営する洋食レストラン。幼い頃から両親の背中を見て育ち、料理人を志したという。「今は近所の人に毎日食べてもらえる飽きのこないお弁当を目指している。将来はレストラン業にも挑戦したい」 PHOTO:YUKA FUJITA
目印は小さな看板とのれん。見逃してしまいそうなので注意。店頭では日替わり弁当に加えて、“秘密厨房の黒カレー”(税込1080円)も用意する。フルーツチャツネと10種以上のスパイスで仕上げたフルーティーでスパイシーなカレーだ PHOTO:YUKA FUJITA
最寄りの武蔵小山駅から徒歩10分。ひっそりと佇む弁当店「秘密厨房-Himitsu kitchen-」がある。元々、セントラルキッチンとしてケータリング事業を始めようとしていたという主宰の近藤大介さんだが、コロナの影響で弁当事業にシフト。今やイタリア料理で修行した実力とアイデアを詰め込んだ弁当が注目を集めている。メニューは当日まで秘密。でも計算された塩味や酸味などの味付けのバランスは、「いい意味で裏切る。食感の遊びを追求したい」ととことんこだわる。中でも人気の照り焼きチキンは、皮目を一晩かけて乾かすことでタレの乗りも良くなり、時間がたっても香ばしいパリパリの食感を残している。味の決め手は、オリジナルのバルサミコ酢のソース。
住所:東京都目黒区目黒本町4-16-7 1F
電話:03-4361-4385
時間:11:30〜16:00
定休日:年中無休(年末年始を除く)
【ウィッカ】メニューなしのおまかせ弁当は楽しみの宝庫
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この日の税込1200円の弁当は味噌ポン酢だれの豚しゃぶに加え、おからとはんぺんでしっとり仕上げた春巻き、エノキタケの素揚げなど。クミンを入れたポテトサラダと卵焼き、揚げ出しは「ウィッカ」の定番おかず PHOTO:YUKA FUJITA
写真の税込1300円の弁当は、雑穀米にタンドリーチキンとナスとおかひじきのナムル、ちくわとチーズの春巻きなどを詰めたもの。食材の彩りも形も食感もさまざまで、家庭料理の延長から生まれるアイデアが特徴だ PHOTO:YUKA FUJITA
もともと「自由気ままに好きなものを食べたい」と料理を始め、家族や友人と過ごすおうちご飯作りが好きだったという鈴木さん。ご主人が野菜卸業を営んでいたことから、あらゆる野菜を扱うことでレパートリーも豊富にしている
野菜は茹でずに蒸すのがおすすめという。「蒸すことで和えても水気が出ず、味がぼやけない。コツは時間!タイマーで計るのではなく、香りがたってくるのを鼻で感じながら出来上がりをみる」。熟練の職人さながらの経験が味の決め手だ PHOTO:YUKA FUJITA
人気の春巻きはちくわチーズやイカとバジルなど変わり種がラインアップ。唐揚げは鶏のムネ肉を使い、にんにくは入れず生姜を多めに味付け。片栗粉と小麦粉を混ぜた粉でカラッと揚げる PHOTO:YUKA FUJITA
「ウィッカ」をはじめて7年を経た6月、生まれ育った実家のキッチンを改装し再始動。「母もここで料理していました。身振り手ぶり教えてもらったわけではないですが、いつしか私も料理好きになりました。娘も関心を持ってくれている」とうれしそうに語る PHOTO:YUKA FUJITA
出版業界で特にファンが多いのが、鈴木真弓さんによる「ウィッカ(WICCA)」だ。ホームパーティーで振る舞う料理から、ライター仲間の一声でレシピ本「野菜たっぷり鈴木さんちの玄米ごはん」(アスキームック)を出版。その後デリや弁当を本格販売することにしたという。基本の弁当メニューはなし、金額とおかずの希望を聞いて作り始める。「普段の家庭料理の味つけを気分で変えていったり、スーパーで旬の食材を選びながらおかずを決めたり、私が楽しめる弁当作り」が人気の秘訣だ。和と洋をミックスした複数のおかずは「長年の経験」で組み合わせる。箱をあけてからおかずを口に入れるまで、ワクワクが止まらないのだ。
住所:東京都世田谷区経堂2-31-2
電話:090-7244-0041
時間:不定期
定休日:不定休