バラエティーショップやドラッグストアを主要販路とするフレグランスブランド「フェルナンダ(FERNANDA)」が、30代以上の“大人世代”まで支持を広げている。6月に新作“モモコレクション”からボディーミストやオードパルファム、ハンドクリームなど全13アイテム(税込990〜7700円)を発売。同コレクションは廃棄予定の桃から抽出したエキスを原料に使い、ブランドとして初めて食品ロス削減への取り組みを発信している。フェルナンダジャパンの流合貴之CEOに背景を聞いた。
WWD:バラエティーショプやドラッグストアの売れ筋ランキングでは上位常連と支持を集めている。人気を支えるものは何か。
流合貴之CEO(以下、流合):2010年のブランド立ち上げから、企画・デザインをカリフォルニア在住の山崎が担当し、製造は日本で行ってきた。香りのクオリティーの高さには自負がある。加えて、販路を卸、直営店、ECで展開しているが、チャネルの成長がうまくはまったこともある。実はフレグランスブランドで卸と直営店のチャネルを持っているブランドはあまりない。プラザやロフトなど卸のターゲットは10〜20代、アトレなどに出店する直営店は20〜40代までが来店する。19年以降、直営店を拡大してきた中で、若いときに顧客だった人が直営店に戻る現象があった。慣れ親しんだコスメを長くリピートするストーリーを作れたことが奏功したと考えている。今後も積極的に直営店を拡大していく予定だ。
WWD:6月に発売した“モモコレクション”は、山梨県にある桃農園のモリタファームとの共同開発によるもので、食品ロス削減の取り組みを発信している。サステナビリティの打ち出しはブランドとして今までになかったがその背景は?
流合:昨年発売した“フルーツシリーズ・モモコレクション”が大変人気で再販を希望する声を多くいただき、原料を探す中でモリタファームとの出合いがあった。桃の収穫では、完熟しすぎて輸送に耐えられないものや傷により廃棄せざるを得ないものが発生する。モリタファームには昨年廃棄予定だった桃を保管してもらい、その桃から抽出したエキスを共同開発した。当社は2年ほど前からサステナビリティの取り組みに着手し、香料や容器、ショッパーなど包装材も約9割をバイオマスPETなどの環境配慮素材に切り替えた。そのほかにも花市場で売れ残ったものを香料メーカーが引き取り原料にしたものを使うなど、環境に配慮した製品開発を行なってきた。これまでそのことを大々的に発信することはなかったが、食品ロス削減から生まれた今回の“モモコレクション”は、初めて原料開発から自社で行い、メッセージとしても伝わりやすいと考え“サステナブルフレグランス”として発売した。
WWD:2010年のブランド立ち上げ時からサステナビリティのフィロソフィーはあったか。
流合: 当初はなかった。19年に直営店をオープンしてお客さまと直接コミュニケーションをとるようになり、サステナビリティのニーズを感じるようになった。10代や20代のお客さまが歳を重ね、求めるものが増えている。さらに、コロナ禍で社会情勢や生活様式が変わり環境配慮やウエルネスへの意識が高まった。そうしたニーズに対応した製品開発が必要になっている。ここ数年、香料を可能な限り天然由来原料への切り替えに取り組んできたが、香調が変わってしまうなど難しさがあった。ロングセラーでありヒーロー製品の“マリアリゲル”の香りも、リピーターの期待に応え香りのバランスを崩さないよう再現するのに苦心した。そうした製品開発の裏側、サステナビリティの取り組みの伝え方がこれまで難しかった。今回の“モモコレクション”は、いいきっかけになった。
WWD:これからのサステナビリティの取り組みとしてどんなものが考えられるか。
流合:香料メーカーと共同で大島桜を使った原料開発に取り組んでいる。大島では大島桜を未来に残すための植樹活動が行われている。そこで発生する間引きした桜の花びらを香料に使うことで、地域や地方創生に貢献する。こうした取り組みを今後広げていきたい。食品ロスの問題は農業や食品業界の問題と捉えられがちだが、社会課題の解決には枠を超えた取り組みが必要だ。われわれだけでは解決しないので、同業他社でも同様の取り組みするところが増えるといい。廃棄される食品や花には非常に可能性がある。