伊藤忠商事は7月8日、繊維カンパニープレジデントの諸藤雅浩・常務執行役員と武内秀人・執行役員ブランドマーケティング部門長、中西英雄ファッションアパレル部門長ら幹部による記者懇談会を行った。繊維カンパニーは2022年度に純利益260億円を計画しているが、諸藤常務執行役員は「全社を挙げてもっと上を目指せという指令が出ている。繊維カンパニーでも利益倍増を目指し、この夏にも幹部を招集して1日をかけて中身を練る」と語った。
21年度には「低重心経営」を掲げて、主要子会社の構造改革などを実施していたが、安定した収益体質になったことを受け、22年度以降は「攻め」へと転じる。「ユニクロ」「ジーユー」などを展開するファーストリテイリングとはすでに素材やアパレルOEM・ODMに加え、同社の保有するブランドのコラボなどについて水面下で話し合いを進めるとともに、傘下に収めた「アンダーアーマー」を展開するドーム、ロコンドと共同で展開する「リーボック」など、スポーツ分野を強化する。
ドームには、ブランドマーケティング第一部門長だった北島義典氏が7月1日付で社長CEOに就任した。北島新社長は「伊藤忠からは私を含めて5人が着任した。これから100日をかけてPMI(ポスト・マージャ―・インテグレーション、M&A後の統合プロセス)を行うので具体的な施策はこれからだが、本国の『アンダーアーマー』とも歩調を合わせてウイメンズの強化やアパレル以外のシューズ強化を行いたい。いわゆる社風として『体育会系』の文化があり、伊藤忠のグループ会社の中でも元気がいい会社で、そうした部分は大事にしたい。本国の『アンダーアーマー』も、創業者のケヴィン・プランク(Kevin Plank)も経営に再び関わり、攻めに転じるタイミング。一緒に攻めに転じる」と語った。
ドームはサプリメント事業の「DNS」を20年に日本産業推進機構グループに売却するなど、「アンダーアーマー」に集中する体制となっていたが、プロサッカークラブ「いわきFC」などを運営するいわきスポーツクラブに関しては「『スポーツを通じて社会価値を創造する』というドームの企業理念と深く結びついており、引き続き運営するし、できる限り長く運営に関わっていく」考え。
ファーストリテイリングに関しては、伊藤忠の季刊誌「星の商人」で、岡藤正広会長CEOとファーストリテイリングの柳井正・会長兼社長の対談が掲載されるなど、これまで以上に踏み込んだ関係になると見られていた。アパレルOEM・ODMなどを行うファッションアパレル部門の中西部門長は「すでに素材やアパレル製品の供給など、いろいろな面で取り組むべく話し合いを開始している」という。ブランドマーケティング部門でも「以前からブランドの紹介などもしている」(武内部門長)という。
2020年7月に新設した「繊維デジタル戦略室」を軸に、傘下の事業会社やブランド事業のデジタルトランスフォーメーション(DX化)を支援し、かつ自社ECによる販売を強化する。グループでの自社EC流通額は現在すでに100億円以上の規模になっているが、「AIなども駆使して伸ばし、なるべく早く流通額300億円規模に持っていきたい」(諸藤雅浩・常務執行役員)という。