ジュンは昨年末、香港発のウェブメディア「ハイプビースト(HYPEBEAST)」が運営するゴルフ情報サイト「ハイプゴルフ(HYPEGOLF)」と協業し、アパレルラインを立ち上げた。“ストリートゴルフ”をテーマに、グラフィックにこだわったハイネックジャケットやフーディーといった日常生活でも使えるアイテムをそろえるほか、関係者を招待したゴルフイベントの開催など、コミュニティー形成にも積極的だ。
そんな「ハイプゴルフ」が7月16日、東京・代官山に直営店をオープンする。オリジナルウエアはもちろん、「フックドゴルフ(HOOKED GOLF)」や「ナンバー33(NO.33)」といった海外ブランドとのコラボアイテムや、コメ兵とのタッグで実現したビンテージのゴルフウエア企画も実施。さらに、バリスタの澤田洋史がプロデュースするコーヒーブランド「ハイプビーンズ(HYPEBEANS)」のコーヒースタンドも入り、ゴルフカルチャーの新しい拠点を目指す。
オープンに合わせて、「ハイプビースト」創設者で、世界のストリートシーンに大きな影響を持つケヴィン・マー(Kevin Ma)と、佐々木進ジュン社長にインタビューを実施した。ゴルフを取り巻く市場やカルチャーの変化、「ハイプゴルフ」の展望を聞いた。
WWD:「ハイプゴルフ」を立ち上げた経緯は?
ケヴィン・マー(以下、ケヴィン):4〜5年前にゴルフを始めて、自分でも驚くくらいハマった。テレビで見ていたときは「プレーがスローでつまらないスポーツだな」と思っていたが、実際にはそんなことはなく、人との関わりも楽しくて、のめり込んでいった。一方で、「もっと自分らしいスタイルでプレーできたら面白くなるんじゃないか」とも思うようになった。そこで、自分たちで「ハイプゴルフ」というメディアを立ち上げ、既存のメディアと異なる角度で情報を発信した。その後、業界の中でもゴルフ仲間と出会い、商品も手掛けるようになった。
佐々木進(以下、佐々木):私は2〜3年前にインスタグラムで「ハイプゴルフ」の存在を知り、トレンド感のあるストリートテイストを盛り込んだウエアが新鮮で興味を持った。単にストリートなだけではなく、クラシックなゴルフスタイルに敬意を払いつつ、音楽やストリート、アスレチックの要素を取り入れている姿勢にも共感した。
ケヴィン:ゴルフは紳士のスポーツだから、プレーヤーとしてその伝統には敬意を払いたい。でも、僕らはファッションやストリートカルチャーから始まったメディアで、その感性も大切にしたい。
WWD:2人は以前から交流があった?
佐々木:そうだ。コロナ前には一緒にゴルフを楽しんだ仲で、日本でも「ハイプゴルフ」をやり始めたと聞いて、一緒に何かできないかと自然と話が進んでいった。
ケヴィン:佐々木さんはファッションと小売り、ゴルフビジネス、そしてカルチャーに精通しているから、一緒に働くのは僕にとって“メイクセンス”だった。
佐々木:ありがとう(笑)。ケヴィンも、若くて生きのいいアントレプレナーのイメージが強いけど、とてもインテリジェントで、戦略もしっかりと考えている。だからこそ好きなことを仕事にできている。ゴルフ業界ではすごく稀有だし、ストリートファッションでもレアな存在。一緒にブランドができて光栄だ。
WWD:7月16日には代官山に「ハイプゴルフ」の店舗をオープンする。同店に期待することは?
ケヴィン:より多くの人にゴルフを知ってもらうプラットフォームになってほしい。これまでのゴルフショップは少し入りにくい雰囲気があったが、この店は気軽に立ち寄れるムードを大切にして、「ハイプビーンズ」というカフェも併設している。ユニークなドリンクがそろうから、それだけでも楽しい店舗で、コミュニティー作りにも機能するはずだ。
佐々木:売り上げを求めるだけでなく、ゴルフに触れるタッチポイントの一つになってほしい。われわれが培ってきたゴルフウエアのノウハウを活用しているため、商品は確かな機能性も備えている。王道のクラシックと、新しいストリート。異なる価値観が交差する面白さを感じてほしい。
WWD:現在のゴルフ市場をどう見ている?
ケヴィン:コロナで人気が高まり、その後は落ち着くかなと思ったが、まだまだ勢いが続いている。アメリカや韓国は人気のコースは予約が難しく、ウェイティングリストもある。日本も同じだろう。それに、ゴルフはダサいというイメージもあったが、最近はスタイリストをはじめ業界人もたくさんやるようになっていて、認識が変わりつつある。この流れは続いてほしい。
佐々木:ファッション視点でも盛り上がっているし、スポーツとして始める人も多い。マーケットとしてすごく良い状況だ。ただ、ゴルフブランドが一気に増えて、レッドオーシャンになりつつある。ビジネスがうまくいきそうだからと、ゴルフという果実を食べ過ぎると、糖尿病になってしまう(笑)。節度を持って、正しい方向に導くよう、業界全体が意識する必要がある。
WWD:今後の「ハイプゴルフ」のビジョンは?
ケヴィン:今のユーザーに、「ハイプゴルフ」を楽しんでもらうことに尽きる。敷居も高いスポーツだと思われがちだけど、それは大きな勘違いだ。スタイルも多様化してすごくファッショナブルだし、コースの種類も増えてよりカジュアルに楽しめるものになっている。その事実をメディアや店舗から伝え続けたい。
佐々木:われわれは「ハイプゴルフ」を通して、新しいゴルフ文化を作っていくつもりだ。ケヴィンが言ったように、もっと楽しく、クールなものだと伝える側面もあるし、武道や茶道のように、その“道”を知ることで成長できるものでもある。その二面性をバランス良く備えたゴルフ文化の構築を目指す。