毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2022年7月18日号からの抜粋です)
本橋:百貨店ではコロナ禍を経て中間層のアパレルが厳しく、狙いが富裕層にシフトする動きが顕著になっています。このまま富裕層のものになってしまうのかと個人的にも寂しく思っていることもあり、今回は百貨店だから提案できるファッションの面白みや売り場作りにフォーカスしました。
林:かつては大黒柱だったが、百貨店の衣料品売り上げは20年前に比べて半分以下になってしまっていて、コロナ禍がさらに追い打ちをかける形になってしまったよね。
本橋:はい。そんな時代ですから、百貨店も自分たちが売る価値のあるものが何かを考え、メーカーと一緒に商品開発したり、サステナビリティという共通の大きな旗印を掲げたりして、お客さまを巻き込んだムーブメントを作っていくことが必要だと思いました。
林:今、日本の個人消費280兆円のうち百貨店売り上げは2%程度。そもそもニッチな市場で勝負しているから、そこを尖らせていくことや、ECでも買えないものを扱っていくという路線が鮮明になっていると感じている。取材の中で、何が印象に残った?
本橋:阪急うめだ本店が構想している新しいエリア「グリーンエイジ」は、年齢層や価格帯、カテゴリーを超えて、ラグジュアリー・モードブランドとアウトドアブランドをミックスするなど、これまでにない売り場になりそうです。百貨店は衣食住あらゆる商品を網羅するネットワークを生かせば、他の小売業にはまねできない売り場を作れるポテンシャルがあるはずです。
林:そういうことに共感してくれるお客さまは限られるだろうけれど、そこをターゲット層として捉えて、感度が高く上質なコンテンツで勝ち残っていくということだと思う。もちろん大衆百貨店がもう終わりというわけではないが、そごう・西武売却のニュースなどは象徴的だったよね。
本橋:そうですね。今回の特集を通じて、百貨店がチャレンジングな売り場を作って、それがきっかけで回復につながればいいなと思いました。もっとみんなを引っ張っていける大きな存在として、俯瞰的な視座を持って、どっしり構えてやってほしいです。