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伊勢丹新宿×阪急うめだバイヤー対談 百貨店が作るべきは“大義”のあるファッション売り場だ

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 百貨店の衣料品に浮上の気配が見えない。感染収束の兆しが見え始めた2022年4月以降も、各社の衣料品売上高はコロナ禍以前の1〜3割減程度で推移。これまでカテゴリーキラーやファストファッション、ECの台頭など度重なる競合の登場でジリジリと縮小してきた百貨店の衣料品シェアはさらにしぼんでしまった。

 コロナ禍は人々にとって、衣料品の消費について再考する機会になった。百貨店で「なんとなく」服を買ってきた層にも、オンラインでの購入やファストファッションなど代替手段にシフトしてしまった人はいる。新鮮な魅力を提供できない限り、離反した顧客は戻らない。

 そこで現場では、百貨店ファッションの新しい価値を示そうという動きが、まず自主編集フロアで起こっている。伊勢丹新宿本店と阪急うめだ本店。ファッションを強みとする、東西を代表する百貨店としてしのぎを削ってきた両店も、それぞれ売り場の再構築を進めている。

 伊勢丹新宿本店本館3階の婦人服の自主編集売り場「リ・スタイル」は、神谷将太バイヤーの下、スタッフならではのスタイリングを際立たせ、「個」を重要視した売り場作りを進める。阪急うめだ本店では、同社で長らくメンズファッションのバイヤーを務めてきた宮本智美氏が、“自然との共生”を掲げたカテゴリーミックス型の新たな売り場「グリーンエイジ」の23年オープンに向け、8階の改装に着手した。両氏の対談を通じ、百貨店が目指すファッション売り場の未来形を探った。(この記事は「WWDJAPAN」7月18日号からの抜粋です)

WWDJAPAN(以下、WWD):コロナ禍を経たファッション消費の現状をどう分析するか。

宮本智美・阪急うめだ本店グリーンエイジ開発部ディビジョンマネージャー(以下、宮本):ラグジュアリーは非常に好調ですが、ファストファッションなど低価格帯との消費の二極化がますます進んでいます。その分、百貨店の中間価格帯も自然と存在意義が薄まってきてしまっていて、何かしらのお客さまに選ばれるための“旗”が立っていないと厳しくなってきていると感じます。

神谷将太・伊勢丹新宿本店「リ・スタイル」バイヤー(以下、神谷):その旗も、「これがトレンドです」という “正解”を提示するものではないですね。売り場のブランドのラインアップがすごいから、では通用しない。商品のデザインや新奇性以外の部分で、小売りである僕らがよりお客さまのことを理解し、もっと深いところで購入動機やエンゲージメントを作っていかないと、いずれ立ち行かなくなってしまう危機感が強くなってきています。

宮本:そういう流れの中で、一昨年にリニューアルした「リ・スタイル」の新しいコンセプト “ビューティフルチョイス”はすてきだなと思いました。

神谷:お客さまの関心は「自分が何を着たいのか」という内面的な方向にシフトしています。ならば僕らが作る売り場はトレンドの集積ではなく、店頭に立つスタッフの「感性」が際立ち、それに共感してもらう場所であるべき。SNSやアプリなどオンラインの接点も駆使して、商品の選び方や着こなし方を押しつけるのではなく、あくまで選択肢を提示しています。

宮本:だからこそ、スタッフの“個”を大事にした売り場作りをされているんですね。

神谷:買い付けた洋服は全て店頭スタッフが着用し、おのおのが自分らしいスタイリング画像をインスタグラムで発信したり、ECに掲載したりするようにしています。掲載するアイテムはシーズンで1000型以上にもなるんですが、こういう地道な積み重ねで「リ・スタイル」らしさ、そのスタッフらしさがお客さまに伝わっているのだと捉えています。売り場の業績はコロナ以前と比較しても好調に推移していて、オンライン経由の売り上げは4割に到達しました。SNSなどでファンを多く抱えるスタッフは、自分で選んだアパレルや雑貨などを集め、売り場の区画でポップアップストアを実施し、ファンを増やしています。阪急うめだ本店の8階では、今までにないコンセプトの売り場を作られているそうですね。

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