昨年の就任以降「マスから個へ」を掲げた経営戦略を進める三越伊勢丹ホールディングス(HD)の細谷敏幸社長。リアル店舗の集客力に頼ったビジネスモデルからの脱却を目指し、アプリを介してパーソナルにつながる「識別化顧客」の拡大に注力する。最上位顧客を相手にする外商ビジネスではすでに成果が出ており、そこで得たノウハウを他の顧客にも広げていく。「百貨店での買い物は一種のエンターテインメントであるべき。ありきたりでない、特別感のあるマーチャンダイジングを磨けば、選ばれる存在であり続けられる」と自信を深める。(この記事は「WWDJAPAN」7月18日号からの抜粋です)
WWDJAPAN(以下、WWD):重要KPIである識別化顧客の獲得の進捗は?
細谷敏幸社長(以下、細谷):当社の公式アプリ「三越伊勢丹アプリ」はローンチから1年がたち、これまでで90万人以上のデジタル会員を獲得した。中でも伸び率が高いのが20〜30代の若い層だ。伊勢丹新宿本店は4月、客数はコロナ前の水準に至らないものの、売上高では2018年同月を超え、(三越と伊勢丹の)統合後最高売り上げとなった。識別化顧客に向けたパーソナルなアプローチを進めたことで、顧客1人当たりの購買単価が伸びている。
WWD:外商売上高は両本店(伊勢丹新宿本店と三越日本橋本店)で790億円。コロナ前と比較しても大きく伸長している。
細谷:コロナ前の19年と比較しても2ケタ増と、前例がないほどの伸び率を示している。外商スタッフとお客さまの「1対1」の旧来の外商ビジネスの課題は、関係が長期化すると提案がマンネリ化し、サービスが新鮮味を失ってしまうことだった。そこで1人の外商顧客に対し、チームでさまざまなニーズに対応する「1対複数」の仕組みに変えた。さらにアプリを介した継続的なコミュニケーションやAI(人工知能)による分析・提案といったデジタルの力を加えることで、お客さまの隠れたニーズをどんどんあぶり出す。チームにバイヤーも加わったことで、外商スタッフと連携し、お客さまの期待を超えるダイレクトマーケティングができている。従来のようにお宅に訪問するばかりでなく、特に若いお客さまは百貨店内でおもてなしを受けることを好まれる。
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