「アート・オブ・フュージョン(融合の芸術)」をコンセプトに機械式クロノグラフを中心とするスポーツウオッチを手がける「ウブロ(HUBLOT)」のリカルド・グアタルーペ(Ricardo Guadalupe)最高経営責任者が来日した。昨年12月には銀座に続いて表参道に新たなフラッグシップ・ブティックをオープン、人気のスポーツ・クロノグラフ初のスクエア型モデル「スクエア・バン」や、鮮やかなカラーウオッチの相次ぐ完売など絶好調なビジネスについて聞いた。
2020年、スイス時計の対外輸出総額は、前年比マイナス21.8%の217億スイスフラン(約3兆380億円)と大幅に落ち込んだ。だが21年は一転、コロナ前の19年比でもプラス3.5%という、史上最高の223億スイスフラン(約3兆1220億円)を達成した。「ウブロ」などを含む、ラグジュアリー時計がけん引している。
この状況にグアタルーペCEOは、「30年以上時計ビジネスに関わってきたが、今は経験したことのない成功を収めている」と驚きを隠さない。
では、「ウブロ」のかつてない成功、全世界的な好調の要因、理由とは?
「他社にはないユニークで魅力的な製品開発の努力が報われたと思いたいが、最大の要因は、新しい顧客が増えたこと。これまで高級時計に興味を持たなかった人々、特に若い世代の成功者が『ウブロ』に興味を持ってくれた。彼らはネットビジネスや暗号資産など、新しいビジネスで成功した人々だ。私たちは『そんな人たちに支持される時計とはどんなものか?』を考えながら、製品開発を進めてきた」。独自に開発した、スカイブルーやパープル、グリーンなどカラフルなセラミックをケースとブレスレットに採用した「ビッグ・バン インテグレーテッド」は、こうした考えから生まれた新作だという。
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「新しい顧客は、時計でも『自分を表現したい』と思っている人々。これまでの高級時計の常識にとらわれない。デザインでも他社とは違う、『ウブロ』独自の個性を求めている。こうしした人々にアクセスするには、共感してもらえる『仕掛け』が不可欠だ。そのため『ウブロ』はFIFAワールドカップサッカーに代表されるスポーツやアスリートとのコラボレーションを続けてきた。日本の村上隆や、フランスのリチャード・オーリンスキー(Richard Orlinski)、イギリスのマキシム・ビューチ(Maxime Plescia-Buchi)ら世界的なアーティストとのコラボもこの一環。DJスネーク(DJ Snake)のように音楽とのコラボもスタートし、素晴らしい反応を得ている。これもブランドの1980年の創業時から続くコンセプト『アート・オブ・フュージョン』の実現のひとつ。今後もコンセプトをキープして、挑戦を続けていく」。
こうしたコラボレーションの相手が、まさに旬な人たちなのも「ウブロ」のコラボモデルを見て感心するところだ。
「コラボレーションの話をまとめているのは、私ではなく本社のマーケティングチーム。人気だからお金を積んで無理にコラボすることはしない。『ウブロ』の世界に魅力を感じ、興味を持ってくださり、一緒に楽しく仕事ができることを大切にして選んでいる」。
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「ウブロ」の大胆な挑戦は、ケースやブレスレットの素材からムーブメントまで、自社でゼロから開発・製造する高い技術力を持っているからだ。スポーツウオッチでの成功例は数少ないスクエア(四角)ケースの「スクエア・バン」も、高い技術力があるから実現できた。
「これからは、若く新しい顧客のように、時計を道具ではなく『自分を表現するラグジュアリーなアイテム』として選ぶ人が増えるはず。中でもハイエンドな機械式時計は、アート作品のような希少性、独自性がさらに求められる。さらに新しいフュージョン(融合)を追求して、お客様の期待にいち早く応えたい」。