「WWDJAPAN」ポッドキャストシリーズの連載「考えたい言葉」は、2週間に1回、同期の若手2人がファッション&ビューティ業界で当たり前に使われている言葉について対話します。担当する2人は普段から“当たり前”について疑問を持ち、深く考え、先輩たちからはきっと「めんどうくさい」と思われているだろうな……とビビりつつも、それでも「メディアでは、より良い社会のための言葉を使っていきたい」と思考を続けます。第26弾は、【パーソナルカラー】をテーマに語り合いました。「WWDJAPAN.com」では、2人が対話して見出した言葉の意味を、あくまで1つの考えとして紹介します。
若手2人が考える【パーソナルカラー】
生まれ持った肌、瞳、髪などの色になじむ、似合う色の系統を指すパーソナルカラーは、一般的に“イエローベース(イエベ)”と、“ブルーベース(ブルベ)”に大きく分けられる。さらに細かく“イエベ”の春か秋や、“ブルベ”の夏か冬の4シーズンに分けたスタイルがよく知られる。“イエベ”は暖色系のアンダートーン、“ブルベ”は寒色系のアンダートーンと分類される。似合うカラーの診断だけでなく、「イエベはシルバー系よりゴールド系のアクセサリーの方が似合う」という見方もあるなど、ファッションやメイクに影響力を持つ考えだ。
ファッション&ビューティ業界では接客やサービス体験の向上に使われる傾向があり、販売側も来店客側も、「自分に似合う」ものをより手に入れやすくできるツールとして使われている。ファッションECの日本最大手「ゾゾタウン」を運営するZOZOは、自宅で自分のスマートフォンで計測ができるアシストツール、ZOZOGLASSを手掛け、オンラインでもパーソナルカラー診断に基づいた購買を助けるアイテムを配布している。
一方で、それぞれのパーソナルカラータイプに付随するイメージも形成されている。実際はアンダートーンの診断にも関わらず肌の明るさと混同され、日本の“美白”文化と結び付けられている。“ブルベ”であることを自慢する現象があったり、“イエベ”と診断されることに複雑な感情を抱く人がいたりするのも事実だ。日本特有のトレンドと思われることもあるが、パーソナルカラー診断は人種的にも多様な欧米を起点に「カラーアナリシス(Colour Analysis)」といった名称で広がったもの。クールトーンとウォームトーンという言葉が主流で、表面的な肌の色とは分けて考えられている。ファンデーションの暖色系の色味も、イエローではなくゴールドと呼ぶのも欧米では多い。
近年「イエベ・ブルベ」の概念の発達とネットリテラシーの成熟に伴い、パーソナルカラーとの向き合い方・折り合いの付け方は進化している。当初はカテゴライズすることで、本人が楽しめるファッションやメイクの選択肢を狭めているのではないか、という指摘も多く見受けられたが、2022年現在は新しいカラーに挑戦するきっかけや、似合うファッションの可能性の探求として“占い”程度に試してみるなど、消費者の受け取り方もさまざまだ。
【ポッドキャスト】
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ポッドキャスト配信者
佐立武士(さだち・たけし):He/Him。ソーシャルエディター。幼少期をアメリカ・コネチカット州で過ごし、その後は日本とアメリカの高校に通う。早稲田大学国際教養学部を卒業し、新卒でINFASパブリケーションズに入社。在学中はジェンダーとポストコロニアリズムに焦点を置き、ロンドン大学・東洋アフリカ研究学院に留学。学業の傍ら、当事者としてLGBTQ+ウエブメディアでライターをしていた。現在は「WWDJAPAN」のソーシャルメディアとユース向けのコンテンツに注力する。ニックネームはディラン
ソーンマヤ:She/Her。翻訳担当。日本の高校を卒業後、オランダのライデン大学に進学して考古学を主専攻に、アムステルダム大学でジェンダー学を副専攻する。今ある社会のあり方を探求すべく勉強を開始したものの、「そもそもこれまで習ってきた歴史観は、どの視点から語られているものなのだろう?」と疑問を持ち、ジェンダー考古学をテーマに研究を進めた。「WWDJAPAN」では翻訳をメインに、メディアの力を通して物事を見る視点を増やせるような記事づくりに励む