「WWDJAPAN」には美容ジャーナリストの齋藤薫さんによる連載「ビューティ業界へオピニオン」がある。長年ビューティ業界に携わり化粧品メーカーからも絶大な信頼を得る美容ジャーナリストの齋藤さんがビューティ業界をさらに盛り立てるべく、さまざまな視点からの思いや提案が込められた内容は必見だ。(この記事はWWDジャパン2022年7月25日号からの抜粋です)
車のモデルチェンジは、いつの時代も物議を醸す。かつて憧れのレンジローバーが大きくモデルチェンジした時、ショックどころか、怒りさえ感じたもの。日本車は年がら年中モデルチェンジしている印象があるのに、そんな中でもハイブリッド車の象徴プリウスの4代目発表は歴史的失敗とも言われた。それも3代目が圧倒的な人気を誇っただけに、4代目が見方によってはグロテスクで“歌舞伎顔”などの陰口も聞こえてきたのだ。ただその後マイナーチェンジを経て、結果的に最大のヒットを記録。人の目は必ず慣れることを物語った。とはいえデザイン変更はリスク大。それも車には「顔」があるからで、好きな顔、嫌いな顔、そこにはもう物とは思えない、愛情や嫌悪を感じるからなのである。
同様に化粧品のデザイン変更がリスクを大きく伴うのも、特にスキンケアの容器は「人の体」に見えるから。毎日朝晩使うとなれば、もう一緒に暮らすパートナー、化粧品には格別の愛着を感じ、形が変わるのには生理的抵抗すら感じるものなのだ。もちろん批判も何も起きないケースも多々あるが、昨今最も“事件”となったのが「シロ」のリブランディング。全身真っ白のパッケージのふたが黒となり、ロゴが太い大文字となり、シロがクロになった、改良ならぬ改悪だと、大炎上。ただそれも、清潔で繊細な気配美をこそ愛していたファンには「シロは私の物」という強い執着があったからだろう。
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