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アルゼンチン発フレグランス「フエギア1833」創業者が来日 自然の変化や楽器の演奏者までも想起させる香りとは

 アルゼンチン発フレグランスブランド「フエギア1833(FUEGUIA 1833以下、フエギア)」の創業者であるジュリアン・ペデル(Julian Bedel)が来日した。「フエギア」は2010年に誕生。ベデルが愛するポエムやタンゴ、アルゼンチンのパタゴニアに広がる大自然や歴史、文化、人物などをインスピレーション源にしたフレグランスを提案している。日本では、六本木の「グランドハイアット東京」と「ギンザ シックス」内にブティックがあり、約100種類ものフレグランスを販売。香りのリサーチも兼ねて来日したべデルに、ブランドに込めた思いや調香のプロセス、こだわりなどについて聞いた。

WWD:学術的なアプローチでブランドをスタートしたが、どのような思いでフレグランスを制作しているか?

ジュリアン・べデル=フエギア 1833 創業者(以下、ベデル):香りのインスピレーションはあらゆるものから。アートや文学、植物、動物など何でもインスピレーションになる。私はアルゼンチンの都市と農村の間で育った。アルゼンチンの伝統的な文化であるタンゴやダンスはエリアにより異なり、それが文化の中心になっている。タンゴはアルゼンチンの文化を凝縮しているといってもいい。そういった文化的な思いが私のクリエイションの根底にある。

WWD:多くのオリジナルのフレグランスブランドがあるが、「フエギア」が他のフレグランスと違う点は?

ベデル:香りのアイデアが生まれたとき、イメージだけでなく、技術的にその香りを分析して香りの要素を化学的に分析する。それにより、香りを構成する分子を元に構成していくという点。例えば、世界最高峰の弦楽器である「ストラディヴァリウス(STRADIVARIUS)」の香りを表現するために、バイオリンに使用されている木の香りだけでなく、それを演奏してきた優れた音楽家の演奏時の空気感も忠実に再現するんだ。夏を感じさせる新作“アルマ”は、スペイン・メノルカ島に咲く花のサントリナやカモミール、ローズマリー、ジャスミンなどを採集して蒸留した香りだ。島で原材料を採集することにより、メノルカ島の夏の太陽を純粋に再現できた。このように、さまざまな場所の自然の香りを捉えて届けている。私は、植物のメッセージを伝えるパフュームクリエイターだ。調香師は、会社の香りのパレットから美しい香りを予算内で制作するが、私は、納得のいく自然素材を使用して予算に関係なく香りを作り出している。

フレグランスはある意味透明であるべき

WWD:フレグランスの原料=自然原料へのこだわりの理由は?それらは、全てオリジナルか?

ベデル:「フエギア」では植物の香りを、元来の美しさと同じレベルで再現できるかというのがポイント。色々な場所の自然の香りを捕まえて届ける香りのメッセンジャーだ。フレグランスとは、自分の中の美を覚醒させるものであるべき。フレグランスは化粧品ではない。植物のエッセンスを取り込むことで気分を高めるものであるべきだと思う。だから、南米の薬効成分を持つ植物の香りを使うこともある。

WWD:調香にかかる期間は?香りが完成したと感じる決め手は?

べデル:アイデアが浮かんで、それに命を吹き込むための原料を考えるのに時間がかかる。ラボに原料があれば、あまり時間はかからない。香りにもよるが、木に菌を埋め込み樹脂が出るのを待ってから制作した“ウード”には約10年を費やした。樹脂とは、木が自分を菌から守るために発酵してできる化合物のようなもの。それは、バニラやタバコ、コーヒー、チョコレートの制作過程に起こるメイラード反応(食品の加工や貯蔵の際に生じる、製品の着色、香気成分の生成、抗酸化性成分の生成などに関わる反応)と同じ。自然変化には時間がかかり、結果が出ないこともある。フレグランスが完成したと感じる瞬間は、絵画と一緒で、一番難しい。香りの説明はせず、他の人に感想を聞いてみて、手直しを加えて完成させることも。なぜなら、フレグランスは付ける人の肌と影響し合うから。付ける人の香りと相まっていい香りかというのが大切だ。フレグランスは、付ける人が本来持つ香りを消してはならないある意味、透明であるべきものだと考える。

自然の美しさ、演奏などの擬似体験を可能にする香りを提供

WWD:さまざまな香りを調香する際に意識するものやことは?何をイメージして調香するか?

べデル:フレグランスの調合は作曲するのと同じように本能的なもの。理屈ではなく、頭に浮かんだものを直感的に感じ取り、香りに反映している。ラボには約3000種類の香料の原料があり、技術もある。だから、直感を信じて、自分の周波数で調香するんだ。

WWD:調香師はザ・ノーズと言われ、嗅覚の鋭さや特殊な感覚が必要とされるが、調香師になろうと思ったきっかけは?

べデル:私は、自分を調香師とは思っていない。植物のメッセージを伝えるパフュームクリエイターだ。調香師は、会社の香りのパレットから美しい香りを予算内で制作するが、私は、納得のいく自然素材を使用して予算に関係なく香りを作り出している。芸術家一家の1人として育ち、画家や彫刻家として活動してきた。工房で素材と向き合う作業が好きだったが、自分に向いていなかった。植物が好きだったということもあり、絵の具の色素を植物の香りの分子に置き換えてみようと思った。絵の具のパレットを香りのパレットに置き換えたといってもいい。絵の具も香りも、何かを表現する“媒体=言語”だと考える。私自身、香水はつけない。だが、自然の香りは大好きで、素晴らしい植物の美しさをフレグランスで届けられればと思った。「フエギア」は、植物学者が持つ植物へのこだわり、化学者の香りを分子の状態まで分析するアプローチ、芸術家の直感が融合して生まれる。植物学者、化学者、芸術家の各アプローチは切り離せない。自然の香りもそうだが、演奏などを擬似体験できるようなさまざまな香りを提供している。

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