「SK-II」はこのほど、滋賀県野洲市にあるSK-II滋賀工場内に新施設「ピテラ(TM) エクスペリエンス センター」を開設しメディア向けに公開した。同工場は「SK-II」唯一の製造拠点であり、13の国と地域に流通する「SK-II」製品の全ての製造を担う。2019年に製造棟を増築し、滋賀工場の創業50周年となる昨年には新管理棟が竣工した。同棟内に「ピテラ(TM) エクスペリエンス センター」を開設し、約10年ぶりに工場内を公開した。
プロクター・アンド・ギャンブル(PROCTER & GAMBLE以下、P&G)では、サステナビリティをグローバル経営戦略の一つに据え、長期ビジョン「Ambition2030」を通じ明確な数値目標を設定している。さらに40年のネットゼロ達成に向け、世界に約130あるP&Gの工場のうち、日本・滋賀、フランス・ブロワ、スペイン・ヒホナ、チェコ・ラコナにある4つの工場をリードサイトに選定。環境負荷低減のパイロットプランを推進する。日本国内には滋賀工場のほかに「パンパース(PAMPERS)」などを製造する明石工場、「ファブリーズ(FEBREZE)」「レノア(LENOR)」を製造する高崎工場がある。
自動化により安全・衛生面を厳格に管理
滋賀工場では、環境に優しいサプライチェーンを目指し包装ラインや製造システムを刷新。倉庫を自動化するなど安全・衛生管理を徹底する。製造ラインのガラス製ボトルの亀裂をチェックする工程では、AI(人工知能)搭載の機器を導入。AIが学習することで検査の精度を高めている。ボトルをレールに乗せる工程では、ロボットのアームが正確な動きで割れや破損が起きないようにボトルを運び、中身の充填前に二重のジェット噴射でボトル内の細かい埃を取り除く。外箱のラベルの位置にズレがないかの検品も機械による自動スキャンで行う。自動化と人の目によるチェックの組み合わせにより安全で高品質な製造を可能にしている。
産業排水を飲料レベルまで浄化し再利用する取り組み
滋賀工場は、製造工程で出る排水を循環させる設備を持つ。現在は排水の11%が循環している。循環過程で飲用水レベルまで水質が浄化され、その後製造用純水に精製される。この設備の導入により、滋賀工場の生産量あたりの水使用量は19年6月以降10%以上向上した。現在新たに、排水に科学的な処理を行い浄化する“水再生プラント”を建築中で、12月竣工を予定する。同プラントで浄化した水を水循環システムに送り込むことで、排水を100%再利用できることになる。
駐車場を利用したアジア拠点最大の太陽光発電パネル
19年6月からは、再生可能電力の購入により二酸化炭素排出実質ゼロを実現している。また昨年、P&Gジャパンとして初めて、またP&Gグループのアジア拠点最大の太陽光発電パネルを駐車場に設置した。太陽光パネルで発電した電力は、管理棟の電力需要を100%カバーするほか、余剰電力は化粧品製造設備で利用する。これにより生産量あたりの温室効果ガス排出量を10年比53%削減した。将来的に、滋賀工場としての二酸化炭素排出量ゼロを目指す。これらの取り組みにより、P&G滋賀工場は21年に国際環境認証制度「LEED」のゴールド認証を取得。3月には、全米製造業協会(U.S National Association of Manufactures)のサステナビリティ・サーキュラーエコにミーリーダーシップアワードを受賞した。
新設した「ピテラ(TM) エクスペリエンス センター」
「ピテラ(TM) エクスペリエンス センター」では、独自の天然成分であるピテラ(TM)研究の歴史や肌測定のミニマジックスキャンを展示。壁には“責任あるバリューチェーン”のモデルを一筆書きで描いたイラストや、滋賀の伝統工芸品である信楽焼に従業員を描いたオブジェを飾り、地域や人とのつながりを伝えている。建設に際しては、再生プラスチック以外のプラスチックを使用せずに設計した。管理棟の建設過程でも、低炭素鋼など持続可能な材料を用い、埋め立て廃棄物ゼロを実現した。「ピテラ(TM) エクスペリエンス センター」の一般公開は未定となっている。