新丸ビルの建て替えプロジェクトもいよいよ大詰め。3年半もの年月をかけて開発した新施設にお客さんは来てくれるのか。期待と不安が入り混じる中、2007年4月27日のオープン日がやってくる。(この記事はWWDジャパン2022年8月1日号からの抜粋です)
商業施設はお客さま目線で作らなくてはいけない。予算がない、工期が短い、人が足りない、前例がないなどの横やり——完成までいろいろな問題が起こるが、「だからしょうがない」といってもお客さまには関係のない話だ。つまらないと感じたら二度と来てくれないだけである。
前回話した通り、新丸ビルは激しい議論を重ねながら開発した。「ユナイテッドアローズ」をはじめとしたアッパーな店舗を集め、それにふさわしい舞台のような内装にした。飲食ゾーンはカジュアルだけれども、共有部の空間演出にこだわり、インテリアも本物を採用した。ソファーや椅子など、買い物中に一息つけるスペースも充実させ、お客さまの満足感を高めた。
内装以外でも紆余曲折はつきなかった。
5階の飲食ゾーンでは、深夜営業に挑戦した。オフィス街の丸の内は当時、遅くまで営業する飲食店がほぼなかった。ならば新しい提案をしようと考え、分離管理で25時まで営業するプランを立てた。案の定、社内の一部から反対の声が上がった。上品な丸の内を飲んだくれの街にするな、というわけだ。
あきらめかけていたところ、思わぬところから援軍が現れる。経済産業省である。丸の内と大手町を国際金融センターにする構想を打ち出したのだ。丸の内と大手町には大手金融機関の本社が集中している。国際金融のビジネスは時差もあり、24時間休む間がない。経産省から三菱地所に、「各社のトレーダーたちが深夜でも食事できる場所を確保できているか」という御下問があった。一気に形勢逆転である。会社からゴーサインが出た。
定期購読についてはこちらからご確認ください。
購⼊済みの⽅、有料会員(定期購読者)の⽅は、ログインしてください。