アダチプレスは、昨年41歳で急逝した「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH、以下、オフ-ホワイト)」創設者のヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)が、2016年から21年までに残した9つの対談を翻訳し、収録した書籍「ダイアローグ」を発売した。同書にはトム・サックス(Tom Sachs)、トム・ベットリッジ(Thom Bettridge)、ハンス・ウルリッヒ・オブリスト(Hans Ulrich Obrist)、レム・コールハース(Rem Koolhaas)、ジョナサン・ウィングフィールド(Jonathan Wingfield)、ジャック・セルフ(Jack Self)、サミール・バンタル(Samir Bantal)、アンニャ・アロノウスキー・クロンバーグ(Anja Aronowsky Cronberg)が登場し、さまざまなテーマをヴァージルと対談している。
7月25日には同書の刊行を記念し、ファッションブランド「ロジック(ROGIC)」を手掛け、「オフ-ホワイト 東京」のサブマネジャーを務めるMAOと、朝日新聞でファッションを担当する後藤洋平記者が、同書を翻訳した平岩壮悟の司会のもと、代官山蔦屋書店で対談を行った。対談の様子は期間限定でアーカイブ配信し、オンラインイベントへの事前申し込み者のみ試聴が可能だ。
MAOは、インスタグラムでヴァージルのファンアカウントを最近設立したほど、ヴァージルのファンであることを公言する。「初めて彼に会ったのは、2014年に原宿の『グレイト』で行われた『オフ-ホワイト』の日本のローンチパーティー。その後、16年に日本初のショップ『オフホワイト 東京』ができると聞き、迷わずオープニングスタッフに応募しました」。
後藤記者は、ヴァージルが「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のメンズ アーティスティック・ディレクターに就任後、初のショーついて振り返った。「パレロワイヤルに虹色の大きなランウエイが敷かれ、冒頭からたくさんの黒人系モデルが出てくるショーは、これまでに見たことがありません。隣で『WWDJAPAN』の村上要編集長が泣いていて、僕もついもらい泣き。一緒に取材しに行こうと思ったのですが、屈強なボディガードに止められ、叶わなかったという思い出があります(笑)。ランウエイ会場ではエリアごとに色の違うTシャツが渡され、そこでも虹色を表現していたのが印象的でしたね。来場者だけではなく店員さんや招待された学生たちもTシャツを着用して会場が虹色に染まり、ヴァージルの人柄が出ていましたね」。平岩はこれに対し、「ヴァージルを表すキーワードとして“インクルーシブ”が挙げられます。普通だったらこのようなショーは “エクスクルーシブ”で、著名人や記者など限られた人のみが招待されますが、ファッション学生やショップで働くスタッフなど、みんなを巻き込むのがヴァージルらしいですよね」と続けた。
日頃からヴァージルとメッセージでの交流があったというMAOは「彼は本当にマメで、いつもすぐにメッセージを返してくれるので、時差がないんじゃないかって思ってしまうほど。ショートスリーパーのようですね。日本の店舗に来てくれた時は、前日寝るのが遅くても、朝から仕事があったとしても、誰よりも早く一人で店舗に来ていた、とてもストイックな人です。日本のブランドにも大変興味を持ってくれて、私がアメリカに渡航する前にはおつかいを頼まれることもありました。『ルイ・ヴィトン』の新作が発売したらおすすめを教えてくれたり、『オフ-ホワイト』のデザインについて相談してくれたりしたこともありました」と、実際のスクリーンショットや写真とともに明かした。平岩も「ヴァージル自身、過去のインタビューで『若者の意見を知るためにずっと投資してきた』と語っています。MAOさんとのコミュニケーションは、まさにそういう彼の姿勢が表れている」とうなずいた。
イベント後には、ヴァージルが手掛けた『ルイ・ヴィトン』のユニークな招待状などの思い出の品と共に、来場者と交流を楽しんだ。