スノーピークの体験型展示会「ライフエキスポ 2022(LIFE EXPO 2022)」が7月に開催され、新潟・燕三条にあるヘッドクォーターズに行ってきました。同社といえばキャンプ用品のイメージが強いですが、実は“衣食住働遊”を掲げるほど事業を幅広く行っており、そのスケールが肌で感じられるイベントです。各事業の詳細については、「WWDJAPAN」5月23日号で、ウェブにも掲載中の「スノーピーク特集」をチェックしてみてください。
ここでは、記者が展示会で気になったトピックを2つ紹介します。まずは、トヨタとの協業による車用のキャンプギアです。車のバックドアにベースとなる棒を固定し、数分で本格的なタープが組み立てられるほか、荷台に収納可能なテーブルと椅子も付属します。車さえ駐車できれば、あらゆる場所がキャンプフィールドになるわけです。
トヨタの担当者は「もともと自然を楽しむドライブ文化はあるが、肝心のスポットでは、深呼吸して、写真を撮って、ハイ終了という人も少なくない。そこで、車から外に出て、ゆったりとくつろぎたくなるようなギアを開発できないかと、協業がスタートした」と語ります。現在、実用化に向けて絶賛開発中で、まずは電気自動車を対象としたプロダクトになるとのこと。
スノーピークとしては、従来のキャンプギアでは取り込めなかった層に“野遊び”の価値を発信できるし、トヨタとしてはスノーピークの持つキャンプ場に充電施設を設置したり、アウトドアに興味のある層を取り込めたりと、単純な売り上げ以上のシナジーも期待できます。スノーピークはほかにも、コクヨとタッグを組んでキャンプギアを使った新しいビジネス環境の提案など、異業種とのコラボをいくつも仕込んでいました。“野遊びの価値を広める”という確かなゴールに向けて、キャンプにとらわれず業界をの壁を軽やかに飛び越えるのは、同社の大きな魅力ですね。
もう一つは、持続可能性に関する取り組みです。スノーピークは、不要になったテントやタープ、洋服を回収し、JEPLANの技術でポリエステルを抽出して新たな糸を精製し、服へと生まれ変わらせる“リサイクル プロジェクト”を2018年から行っています。さらに昨年から、タキヒヨーとタッグを組み、コットンの再生プロジェクトを始動させました。コットンは天然素材として知られていますが、栽培するのに大量の水がかかるほか、化学繊維のポリエステルよりも扱いが難しく、再生が困難なのだとか。その中でスノーピークは、コットンの循環システムに積極投資しているタキヒヨーと手を組み、工場で出た端材や店舗で回収したコットン素材を粉砕して再び繊維化させ、紡績して生地を作るシステムを開発しました。
自社工場でこの工程を実現しているのは日本初で、昨年秋のスタートからこれまでに約1290万リットルの水を削減するなど、着実に成果を収めています。プロダクトは、デニムやスエット、Tシャツなどのベーシックな製品で、どのアイテムもリサイクル製品だとは思えないクオリティーの高さでした。
最も素敵だったのは、スノーピーク以外のコットン製品も回収対象にしている点です。循環型ビジネスに挑戦する企業は増えていますが、回収は自社製品に限るところが多く、「やっぱりビジネスだな」と思っていました。一方でスノーピークの選択からは、ビジネス的なメリットだけではなく、循環型に本気で取り組む姿勢を感じられます。この真摯な姿勢が人々の共感を生み、スノーピークの躍進につながっているのかもしれません。