国内有数のトラフィックを誇るJR新宿駅に直結し、大手セレクトからパーソナライズサプリまで現代的なライフスタイルを広く扱うのがルミネ新宿だ。コロナ禍を経て、各ショップのイベント開催などを後押しし、さらなる集客と顧客化を図っている。草薙恵美子ルミネ常務取締役新宿店長に聞いた。(この記事は「WWDJAPAN」2022年8月29日号付録ビジネスリポートの先行公開です)
WWD:2022年上半期を振り返ると?
草薙:6カ月累計で予算比2%増。2、3月と、5、6月は予算をクリアした。6カ月間の前年同期比は28%増。過去最高の売り上げだった2018年との比較で9割弱まで戻っているので、堅調に推移しているととらえている。特に2月は、春の立ち上げのキャンペーン「“IT’S NEW” WEEK」に合わせて、予約販売や先行販売、インフルエンサーやブランドのディレクターを招いたイベントなどを開催し、プロパー販売を強化して、高い実績を得た。4、5月は、上海のロックダウンで納期が遅れたブランドが多く、4月は全般的に厳しい状況だったが、後半にかけてGW需要もあり、徐々に遠方からの来店や旅行に向けてのアイテムが動いた。6月はプレセールが主体になるが、商品遅延の問題から対象品番を縮小し、開催を後ろ倒ししたショップが多かった。各ショップ、プレセールをフックにプロパー販売の強化を図り、売り上げにつなげていた。
WWD:特に好調なショップは?
草薙:ルミネ1は、コロナ禍で30代、40代向けが厳しい状況だったが、「ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS)」や「トゥモローランド(TOMORROWLAND)」などの大型セレクトが今年に入って好調に推移している。「ドゥーズィエム クラス(DEUXIEME CLASSE)」や「ユナイテッド トウキョウ(UNITED TOKYO)」も好調で、「セルフォード(CELFORD)」「ウィム ガゼット(WHIM GAZETTE)」「カレンソロジー(CURENSOLOGY)」は19年度をクリアしている。ルミネ2では特に「スナイデル(SNIDEL)」「フレイ アイディー(FRAY I.D)」「ステュディオス(STUDIOUS)」「クラネ(CLANE)」「ココディール(COCO DEAL)」「アメリ ヴィンテージ(AMERI VINTAGE)」「リムアーク(RIM.ARK)」「メゾンスペシャル(MAISON SPECIAL)」「ランデブー(RANDEBOO)」「スティーブンアラン(STEVEN ALAN)」もここにきて好調だ。「アルページュ(ARPEGE)」「マイストラーダ(MYSTRADA)」「ジルスチュアート(JILLSTUART)」などのTSIホールディングスのブランドも堅調に推移している。2月22日から7月末まで期間限定で導入したオケージョンドレスのD2C「カエン(KAENE)」も好調だった。
WWD:好調ショップに共通点はあるか?
草薙:SNSの発信と商品の戦略が合致しているショップは、ファンを作るのがうまい。特に「ココディール」は、インフルエンサースタッフを中心に、SNSの発信でお客さまの目的来店を促し、売り上げにつなげている。「メゾン スペシャル」もインスタライブでの顧客のコメントにしっかり返信するといった密なコミュニケーションでファンを作っている。顧客化の取り組みと商品戦略がうまく連携できていることが重要だ。
WWD:アイテムで好調だったのは?
草薙:咋年の秋冬はブーツが、この春夏もサンダルが非常に好調だ。中でもトレンドは「ドクターマーチン(DR.MARTENS)」。「ダイアナ トータル ルック(DIANA TOTAL LOOK)」のオケージョンパンプスもニーズが戻ってきている。ウエアは、春はカラーアイテムが好調で、特にピンク系やグリーン、オレンジが、トップスだけでなくボトムスについてもよく動いた。ヤング層については、シアー系のトップスやマーメイドスカートがトレンド。レース素材のアイテムも需要が高かった。夏物はノースリーブのワンピース。1枚でさらっと着られる物や、リネン素材が好調。「マリハ(MARIHA)」のワンピースを別注したショップが多く、非常に人気が高かった。
WWD:ビューティは?
草薙:昨年リニューアルした「オルビス(ORBIS)」は、エイジングケアや美白アイテムが好調で、ベストコスメも多数受賞。ユーチューバーやスタイリストを起用したPRが非常にうまく、親近感・安心感がある。ヘアケアの「ダヴィネス(DAVINES)」も継続して好調だ。ルミネ1のB1階に導入した「オサジ(OSAJI)」も、ヴィーガンやオーガニックに関心の高い新規客を獲得している。同フロアは「エディション(EDITION)」も改装し、ノーズショップの新ブランド「コーグ(KO-GU)」も導入したところ、フロア全体が明るく活気づいた。
WWD:消費の傾向に変化はあるか?
草薙:旅行のための洋服やハレの日の需要、ギフトニーズが回復基調になってきている。通勤着も同様だが、オフオン兼用、着回しの利くものが非常に強い。安いから買うということはなく、高くても自分の気になるもの、それか長く着られるもの、サステナビリティも意識して、吟味して購入する傾向が強まっている。安心感がより求められているが、ヤング層は「これが着たいから」というよりも、「誰から買うか」が非常に重要になってきている。この人に接客されたいとか、ブランドのディレクターから買いたいという傾向が顕著だ。
WWD:館としての取り組みで奏功したのは?
草薙:戦略的にポップアップイベントを強化しており、5月末にマッシュグループの7つのブランドの限定ドレスなどがそろう「ザ ドレス ラボ」をルミネ2のイベント広場で開催をしたところ、1500万円以上を売り上げて成功した。5月は「クラネ」ディレクター松本恵奈さんの妹、松本ゆりなさんがプロデュースする「マノフ(MANOF)」の発表会も開催したが、こちらも非常に好評で約2000万円を売り上げた。また、少し混雑を避けて買い物したい顧客へのアプローチとして、ルミネカード10%オフキャンペーン時に30分早く入場できるサービスを実施した。初回は山手線等の遅延などもあったが、顧客来店のきっかけになったと思う。アンケート結果も好評で、今後おもてなしの要素も加えたりを考えている。また、今、SNSをいかに発信を強化していくかといったセミナーをルミネ主催で開催し、その動画を館内で働く人たちに向けて配信している。情報発信がうまいスタッフのノウハウなどをアーカイブを見て、勉強してもらうという取り組みを、今年度は定期的に行っている。SNSや接客など、何が弱いのかをショップにヒアリングして、そこに対して教育を強化している。