「スープストック トーキョー(SOUP STOCK TOKYO)」などを運営するスマイルズが主催するデッドストックや規格外品の蚤の市「パスザバトン マーケット(PASS THE BATON MARKET以下、PTBM)」が7月16~17日に、東京・品川のコクヨ 品川 ザ キャンパス(以下、コクヨ品川)で開催された。「PTBM」は今回8回目。各ブランドのデッドストックや規格外品の蚤の市として2019年11月、東京・京橋で初めて行った。その後、コロナ禍で、2回のオンラインによる実施を経て、第4回以降はコクヨ品川で開催。「PTBM」は主催者、出展者、来場者の共感によるビジネスだ。ここでは、輪が広まりつつある同イベントの意義や醍醐味についてリポートする。
出展者とおしゃべりしながらお得にショッピング
開催日前日にはプレスイベントが行われ、来場者は準備する出展者と和気あいあいと会話しながらショッピング。アパレルやインテリア、雑貨小物などに目移りしながら食品のコーナーに行くと、規格外のパッションフルーツやオクラが八百屋の特売感覚で販売されていた。試食の列ができていたのは、“漬けしらす”を販売する「川くに」だ。神奈川・湘南で朝採れた生しらすを特製ダレに漬け込んだものだという。初めて“漬けしらす”を味わってみたが、正に絶品。これだけでご飯何杯もいける美味しさだ。化粧箱のリニューアルに伴う出展だったが、プレスイベントでも大人気。私もあまりの美味しさに購入した。キッチンツールの「ホームランド(HOMELAND)」では数々のオリーブボードを販売。イタリアやフランスなどの旅先で購入することの多いオリーブボードだが、出展者と話しながら木目の風合いの違うものを選ぶ楽しさを味わいながらサイズが違う2枚をゲットした。
このように「PTBM」は、出展者とおしゃべりしながらお得にショッピングできたり、新しいブランドに出合えたりする楽しみがある。
ビジネスとしても右肩上がり
出展ブランドは、コクヨ品川で初開催の4回目以降、54社程度。第4回目の来場者は3600人、販売店数は1万5000点だったが、それ以降来場者は5000人を超え、販売点数も2万5000〜3万点になった。入場料が300円かかるが、それでも、いつもとは違うショッピング体験を楽しむ来場者が増えている。
出展ブランドはさまざまで、毎回来場者に楽しんでもらえるように、顔ぶれに変化をつけている。そのため、来場者及び販売点数に関して多少の増減はあるものの、イベントの売り上げは右肩上がりだ。
蓑毛萌奈美スマイルズ広報は、「全国各地にB品やD品(訳あり品)が倉庫にある企業がたくさんある。会場のキャパもあり、出展ブランドに限りがあるので、毎回一部新規出展ブランドに参加してもらっている」と言う。そうすることにより、来場者と接点を持ってもらい、日の目を浴びてこなかったものに新しい光を当てるのが目的だ。今後は、テーマを絞り、「PTBM」からスピンオフした企画をはじめ、メーカーの倉庫がある現地での開催、また、ライブコマースなどにもチャレンジするようだ。
お蔵入りではなく「PTBM」へ
出展者からは、「ブランドの歴史で初めて“ワケあり品”を販売。不安もあったが、蓋を開ければ、多くの来場者に喜んでもらった。サンプルやボツ案もお蔵入りすることなく、日の目を見ることができるので、このような場があれば思い切ってものづくりにチャレンジできる」という声がある。傷や汚れのある商品は、今まで放置されていたが、“「PTBM」行き”という目的地ができたことでロスが確実に減っているようだ。「単なるイベント、仕事に留まらない素晴らしい企画。モノづくりに対して考えたり、社内のコミュニケーションが増えて、『PTBM』を通して企業として成長した感じだ」という声もある。
「PTBM」は、企業活動で避けられないムダを価値に替えると同時に小さな生産者にとっては、より多くの人にブランドを知ってもらえる場になっている。ショッピングだけでなく、フードトラックやワークショップなどもあり、縁日のようなワクワクした楽しさを提供している。第9回は10月8〜9日に開催予定だ。