アパレルメーカーの志風音(東京、西村健太社長)は、資本業務提携を結んだEC支援のEストアー(東京、石村賢一CEO)との協業によって、事業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速する。取り組みの第1弾として、グローバル展開するECプラットフォームの構築を目指す。近日中にひな形となるサイトを開く。
両社の資本業務提携は7月25日に発表された。Eストアーが16億7200万円を投じて志風音の50.2%の株式を取得して子会社化する。株式譲渡日は8月31日。志風音の創業社長である西村氏が引き続き指揮をとる。Eストアー創業者の石村氏は、非常勤取締役として西村氏をサポートする。また8月10日には、Eストアーが2023年6月30日に6億6100万円を追加取得して所有割合を70%にすることが発表された。
8カ月ほど前、互いの知人を介して会った西村氏と石村氏が意見交換を重ねるうちに、提携の話が持ち上がった。西村氏は「志風音はメーカーから小売り、商社機能を兼ね備えたユニークな会社だが、ITの知見が足りなかった。Eストアーと組むことで、数年かかる改革を1年で実現したい」と話し、最大の目的がDXの加速であると説明する。一方、石村氏は「本質を見抜く力がある西村さんとなら面白いことができると確信した。表向きはEストアーによるM&Aだが、イーブンな関係だと思っている。西村さんにはEストアーの新規ビジネスに参画してもらうつもりだ」と信頼を寄せる。
志風音(シフォン)は2004年に西村氏が設立した。業容が多岐にわたるのが特徴で、ファッション、スポーツ、ランドセルの企画、生産、小売りなどを手掛けている。ファッションでは、20年から「ヴィクター&ロルフ」の一部メンズラインの生産・販売を手掛けるほか、ドン・キホーテのプライベートブランド(PB)のOEM(相手先ブランドの企画・生産)まで幅広い。スポーツでは20年に老舗スキーウエアメーカーのフェニックスの事業を継承したほか、アスレチックウエア「カッパ」も展開する。ランドセルでは「ディーゼル」など複数ブランドを販売する。西村氏は「業界の常識にとらわれない消費者目線によってビジネスを確立してきた」と胸を張る。
業容の拡大に伴い、収益規模も拡大した。20年3月期の売上高28億円、営業利益7800万円に対し、直近の22年3月期は売上高47億円、営業利益5億2600万円。売上高のEC化率も約30%と高い水準にある。
Eストアーと組んで近日中に開始するECプラットフォームは、志風音の欧州ブラントとのコネクションを生かし、約3万点の商品をそろえる。ECのシステム構築、決済、物流、マーケティングなどで実績のあるEストアーの知見をフル活用する。まずは志風音のサイト内で日本国内向けとしてスタートする。事業が軌道に乗ったのちに独立したサイトに移行し、取り扱い商品を増やしたり、東南アジアなどに市場を広げる考えだ。