ファッション

「トム ブラウン ニューヨーク」2016-17年秋冬ニューヨーク・コレクション

REPORT

過去と現在、そして未来。「敢えてボロボロ」なフォーマルで示すラグジュアリーの将来

「サンローラン」が最新コレクション発表の舞台をパリからロサンゼルスに移したことで、期せずしてパリメンズのオオトリを務めることになった「トム ブラウン ニューヨーク」。最新コレクションは、ある意味、「最新」とは呼び難いフォーマル。袖はもげ、糸は飛び出し、ファーは禿げ、そしてライナーはボロボロ。靴下にも穴が開き、ウィングチップはシミだらけ。そんな洋服を見せることで、「トム ブラウン ニューヨーク」を含むラグジュアリー・ブランドが目指すエターナル、永続性の先にあるスタイルを示した。

 ショーは、チェスターコートにコンパクト丈のジャケット、ジレ、そして、折り返しの大きなクロップドパンツなど、「トム ブラウン」らしい洋服が、超ボロボロ、そこそこボロボロ、新品の状態で3ルック連続で登場。トリオのモデルは、鏡を模した額縁の前に立ったが、新品を着たモデルだけが反対側だ。その演出は、過去と現在、そして未来のスタイルの行方示しているよう。かつては新品だった洋服が、今は着込むうちに経年変化を迎え、この先はさらにくたびれてボロボロになっていく。しかし、ボロボロの洋服には、“味”があり、フォーマル性の高いスタイルだからこそ、“味”が個性につながり、美しい。そんなメッセージを込めたようだ。

 ラグジュアリー・ブランドは今、総じて「ずっと着られる服」「もしかしたら、世代を超えて語り継げるかもしれない服」を生み出そうとしている。しかし、どのブランドの洋服も、時が経ち、幾度となく着られてなお美しいかどうかは、まだわからない。エターナルを目指している今の洋服の将来は、まだ誰も知らないからだ。今回の「トム ブラウン」は、そんな曖昧な将来を暗示したかのよう。ラグジュアリーやデザイナーズ・ブランド全体が考えるべき問題を提示して、今シーズンのパリメンズを締めくくった。

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