アイスタイルは8月15日、米国アマゾンおよび三井物産と業務資本提携を結んだ。それぞれに無担保転換社債型新株予約権付社債(事前に決められた条件でいつでも発行元企業の株式に転換できる権利の付いた社債)などを発行する。これにより約183億円を資金調達し、グローバル事業を加速すると共に、国内流通事業における店舗開発やオンラインとオフラインを融合した美容関連総合サービスなどを強めていく。
同社は2012年の上場を機に、アジアを中心としたグローバル事業に注力してきた。22年6月期決算ではグローバル事業の売上高は全体の12.3%を占める。しかし、中国の新EC法施行に伴う越境EC市場の競争激化、香港におけるデモ、コロナウイルスの感染拡大で海外における不採算事業の規模縮小や撤退を余儀なくされた。またコロナ禍により収益の柱であった国内広告事業も低迷。資金面では10月に事業拡大に向けた運転資金充当のために実行した取引金融機関2行からの長期借入金 60 億円の一括返済の予定もある。
一方で、同社が得意とするメディア・EC・店舗を一体化した事業・サービス成長の機会は増加すると見込む。DX の推進や個人情報保護に関する消費者の関心の高まりなどの事業環境に鑑み、IT 基盤の強化や情報セキュリティの強化もさらに重要となり、テクノロジー投資にも資金が必要となる。その中で「生活者中心の市場の創造」というビジョンを維持しながら、より生活者への価値を高めるために資金、技術、顧客基盤、ブランド、ネットワークの観点で同社の強みをさらに高めることができるプレーヤーと連携することが不可欠と業務資本提携に至った。
アマゾンは子会社のアマゾンジャパンを通じ、アマゾン公式サイトを中心にアマゾンジャパンが販事業者様向けに日本国内で提供している各種サービスやテクノロジーと、アイスタイルが展開するコスメ・美容に化した口コミ・品ぞろえ・店舗作りの知見を活用し、コスメ・美容関連の買い物における利便性や消費者の満足度をさらに向上する。また近い将来、アマゾン公式サイト上に「@cosmeSHOPPING(仮称)」のストアをオープンする予定だ。今後は「@cosmeSHOPPING」と同社のオンライン及びオフラインの各種施策における連携なども検討する。ジャスパー・チャン=アマゾンジャパン社長は「Eコマースやテクノロジーにおける当社の知見・経験と、コスメ・美容に関する情報サイトや実店舗の運営においてアイスタイルが培ってきたノウハウなどをそれぞれ活かし、コスメ・美容関連の買い物でイノベーションをもたらし、利便性やお客さまの満足度を高めていきたい」とコメントした。
三井物産は、同社が有する国内外での幅広いネットワークを活かし、グローバル事業におけるパートナーの発掘や紹介および関連したマクロデータの提供に加え、国内流通事業における店舗開発や課題解決のサポートなどを行う。そのほかアイスタイルの事業成長による企業価値向上に向けた共同事業を検討・開発する。長田務・三井物産執行役員流通事業本部長は「アイスタイルの消費者データおよび事業基盤と三井物産の国内外ネットワークで、ネットとリアルを融合した新たな価値を創造し、世界中のお客さまに美容を通じた日々の幸せを提供していく」と述べた。
吉松 徹郎アイスタイル社長兼CEOは「化粧品市場が大きく変化していく中、総合オンラインストアを運営し、優れた買い物体験を提供するアマゾンジャパンとの協業によって、生活者の一層の満足度向上を図ると同時に、化粧品メーカーにもさらなる価値を提供し、生活者とブランドの新たな出合いを創出する。国内外に幅広いネットワークを持つ三井物産との提携は、将来的な国内外におけるさまざまな共同事業における可能性がある。今後密に連携を取りながら共同事業の検討を進めたい」と語った。