デザイナーの長谷川照洋とウィング・ライ(Wing “Jianying” Lai)が手掛けるウィメンズブランド「ガーウィン(GURTWEIN)」が、2023年春夏シーズンに本格デビューする。2人は英ロンドンの名門、セントラル・セント・マーチンズ(CENTRAL SAINT MARTINS)で服作りを学び、リカルド・ティッシ(Riccardo Tisci)率いる「ジバンシィ(GIVENCHY)」「バーバリー(BURBERRY)」で経験を積んだ実力派だ。ブランド名は2人の名前のアナグラムに由来する。ファーストシーズンは、9月のパリ・ファッション・ウイーク期間中に現地で展示会を行い、その後日本でも披露する予定だ。
同ブランドは、マスキュリンなテーラリングをベースに、フリルやリボン、ドレープ、レースの切り替え、カットアウトなどでフェミニンにアレンジしたリアルクローズを提案する。ターゲットは、“活気にあふれ、成熟した女性たち”。「これまで服を作る中で、キャリアを築き、ポジティブに生きる素敵な女性にたくさん出会ってきた。彼女たちに、オフィスや街中で着用されて、日常を彩るような服を作りたかった」と長谷川デザイナーは語る。
日本のものづくりを世界に発信する意味も込めて、国産の素材を使い、日本の工場で生産する。例えばシルクは、1700年代に着物を起源に誕生した老舗生地屋による素材を使い、テーラーリングは岡山にあるメンズオーダーメードの老舗工場に依頼した。「メンズのテーラリング特有の“硬さ”を出したくて。工場もウィメンズをやるのは初めてなのに、『新しいことに挑戦したい』と快諾してくれた。職人や産地の思いも世界に届けたい」。
アイテムは、肩にフリルをあしらったジャケットやウエストにブランケットをドッキングさせたワイドスラックス、深いサイドスリットとフリルでアレンジしたクルーネックワンピース、無数のロングリボンで装飾したドレスなど全40型をそろえる。価格帯はブラウスが約5万~9万円、ジャケットが約12万円~19万円、コートが約23万円、パンツが約5万~9万円。
エッジィなクリエイションと高額な価格帯から、長谷川デザイナーは「日本のウィメンズ市場にはマッチしないかもしれない」と話す。それでも挑戦するのは、ファッションの楽しさを届けたいからだ。「ロンドンに行った20歳のころ、ファッションはとてもワクワクするもので、デザイナーが輝いて見えた。あのころ洋服から感じた高揚感を、少しでも届けられたらうれしい」。
長谷川デザイナーは高校卒業後、東京で建築・インテリアの専門学校を経て、20歳でセントラルセントマーチンズに入学。修士課程の卒業時には、LVMHプライズの学生部門「グラデュエード・プライズ」に選出され、賞金1万ユーロとともにリカルド・ティッシ率いる「ジバンシィ」で働く機会を獲得した。「ジバンシィ」でティッシに才能を認められると、メインコレクションからプレ・コレクション、オートクチュールまでを横断して手掛ける新設部署のディレクターを担当。18年にはティッシの移籍に伴って「バーバリー」に入り、前職と近いポジションでウィメンズウエアを手掛けた。20年、日本への帰国とともに独立し、パートナーのライとともに「ガーウィン」を設立した。