撮影や取材を行う時に出演者やスタッフにお弁当として提供される“ロケ弁“。その日のモチベーションをさらに高めてくれて、ハードな現場でもおいしくエネルギー補給ができる賜物だ。ここ数年のテイクアウト需要の高まりで、お弁当を購入する機会が増えた人も多いはず。
日本のサンドイッチ文化は、特別である。ワンハンドで食べられる食事としては、おにぎりと同じくらい浸透しており、時代が変わるにつれて新たな個性が生まれている。今回は、ファッション業界人のお腹を満たすサンドイッチ5種類を紹介。写真を撮りたくなる美しいビジュアルだけでなく、各店こだわりの作り方にも注目だ。
【禁断果実】素材の魅力を最大限に引き出すフルーツサンド
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人気は、バナナとピンクグレープフルーツ、オレンジ、キウイの4種類を組み合わせた“元祖フルーツミックス”(税込500円)。カラフルな色合いが甘さと酸っぱさ、懐かしさを感じさせる PHOTO:YUKA FUJITA
8月のおすすめは、ほんのりピンクの“桃とアールグレイ”(税込650円)。シャリっとした食感で食べ応えのある桃をアールグレイシロップに一晩つけ、甘さを控えたかためのホイップクリームとふんわりのパンで挟んだ PHOTO:YUKA FUJITA
6枚切りほどの厚めのパンは、作る前に一枚一枚手触りで弾力を確認。そして水分と乾燥を防ぐために、両面に薄く特製のクリームチーズを塗る。挟む時も包む時もふんわり感を損なわないよう、手仕事の加減には十分気をつけている PHOTO:YUKA FUJITA
前日に仕込む桃などのフルーツは、本来の食感や味を生かすよう味付けし、挟む前に一つ一つていねいに水分をふき取る。クリームはメニューによってクランチチョコなどを混ぜ、食感のアクセントとして加えている PHOTO:YUKA FUJITA
「スウェル コーヒー ロースターズ(SWELL COFFEE ROASTERS)」との大型複合店。8時の開店からご近所客が続々来店する。ホットサンドの“あんバター”(税込660円)や溶けていくほどに違うおいしさが楽しめる“ティラミスアイス”(同600円)も人気 PHOTO:YUKA FUJITA
「FR2」などを運営するせーので勤務した後、フルーツサンド専門店「フツウニフルウツ」で2年間修行した篠崎社長(写真中央)。「今後はサンドイッチだけでなく、食べたい!の気持ちが増すような“的”フードを追求していきたい」 PHOTO:YUKA FUJITA
SNSで今話題のフルーツサンドといえば、トレンドフードでにぎわう中目黒の「禁断果実」だ。アパレル出身の篠崎光希さんが有名フルーツサンド店で修行し、独立した話題の店でもある。その日販売する80個のフルーツサンドは朝6時から2時間以上かけて、若いスタッフが職人のように黙々と作る。主役のフレッシュフルーツと、フルーツサンドのためのふんわりとしたパン、くどくない甘さのホイップクリーム――ひと口食べた時の印象と、時間を置いてもキープするおいしさを考え、味や食感、弾力の全てのバランスを計算し尽くしている。そこには“話題のサンドイッチ”というブームだけにとどまらない人気の秘密がある。
住所:東京都目黒区上目黒1-11-1
電話:080-2349-8056
時間:8:00〜18:00
定休日:不定休
【マモカフェ】ワンプレート料理のような個性派サンドイッチ
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男女問わず注文が多いという“ローストビーフ”(1切、税込900円)。塩こしょうのみで味付けしたローストビーフに、しょうゆベースの玉ねぎソースをかけた人気商品だ。香ばしい胚芽パンとの組み合わせは、ちょっぴり大人の味 PHOTO:YUKA FUJITA
組み合わせで人気なのが、“厚切りBLT”(1切、税込600円)と“たまご”(同300円)。“厚切りBLT”は1cmほどあるベーコンを2種類のレタスなどで包む。粗くつぶした卵とマヨネーズだけの“たまご”は、ずっしり200gのボリューム PHOTO:YUKA FUJITA
2種類入れるレタスは、しっとりとしたサニーレタスとシャキっとしたグリーンカール。パンは武蔵小山の「ネモ・ベーカリー&カフェ(NEMO BAKERY&CAFE)」の胚芽パンのみで、ふんわり柔らかい8枚切りを使っている PHOTO:YUKA FUJITA
「料理に合うスペシャルティコーヒーを」と、堀口さんが世田谷区奥沢にある「エボニーコーヒー(EBONY COFFE)」でオリジナルブレンドコーヒーを考案。お店ではサンドイッチに合うシティ・ローストとフレンチ・ローストを提供する PHOTO:YUKA FUJITA
2人が好きな赤と白を基調にした店内。もともと薬局だったというスペースを改装し、北欧インテリアのような空間に仕上げた。自由が丘駅から徒歩7分、緑が丘駅から徒歩5分という立地で地元客が多い PHOTO:YUKA FUJITA
堀口さん(左)と藤田さん。一日200食を超えるケータリング注文も、息ぴったりの2人でこなすこともあるという。「マモカフェ」のサンドイッチとコーヒーのマリアージュは、2人のそんな姿にも表されているかのようだ PHOTO:YUKA FUJITA
料理好きの藤田真由美さんとコーヒー好きの堀口隆司さんの夫婦が切り盛りする「マモカフェ(MAMO CAFE)」。もともとカフェを主体に運営していたが、コロナ禍の補填として始めたケータリングが口コミで広まり、ファッション業界でも注文が集まるようになる。「お店で出来立てを食べてもらうことにこだわっていた」真由美さんだったが、時間が経ってもおいしいと思ってもらえることに喜びを見つけたという。メインとサラダ、パンのワンプレートの料理をコンセプトにしたサンドイッチは、シンプルな味付けと具材の種類、ボリュームに定評がある。さらに、コーヒーとのペアリングを考えた個性的な一品が並ぶのも、同店ならではの魅力だ。
住所:東京都目黒区緑が丘2-4-5
電話:03-6314-6919
時間:12:00~16:00
定休日:月曜日(臨時休業の場合あり)
【銀座梅林】受け継がれて愛される老舗トンカツ店のカツサンド
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こだわりの経木折にきれいにおさめた“ヒレカツサンド”(4切、税込900円)。パンはかたくても柔らかくてもダメ。肉はヒレでも脂身の少ない中心部位を選んでいるという。ひと口目からカツサンドの概念が覆されるかもしれない PHOTO:YUKA FUJITA
定番人気の“ヒレカツ弁当”(税込1500円)。トンカツとの相性にこだわった梅干しや昆布の佃煮といった“ご飯のお供”も欠かせない。米は冷めてもおいしい「つや姫」を使用。季節によって食材が乾燥しない工夫もしている PHOTO:YUKA FUJITA
“ヒレカツサンド”は豚肉のシャトーブリアンとも言われる、ヒレ肉の中心部を使用。ソースの味を生かすために下味はつけない。肉とソースと同じくらい揚げ油にもこだわり、ヘルシーな綿実油を主にした特製油を使っている PHOTO:YUKA FUJITA
隠し味のからしはパン一枚の片面に、自慢のソースはカツにしっかり絡まり、ポタポタと落ちない適量をカツの片面のみにつけて挟む。パンは固すぎず柔らかすぎない目が詰まったものをセレクトしている PHOTO:YUKA FUJITA
店舗のロゴは、初代・信勝さんと親交のあった講談師、五代目一龍斎貞丈師から贈られた色紙にあった「珍豚美人(ちんとんしゃん)」をリデザイン。手提げ袋に描かれた赤い花は、現代美術作家の大巻伸嗣さんによるもの PHOTO:YUKA FUJITA
澁谷代表取締役。「下町の銀座は表通りにも個人商店が多かったが、ここ数年でラグジュアリーのお店にかわり、数が減っている。時代は移り変わるが、受け継いできた今の味を守っていく」と決意する PHOTO:YUKA FUJITA
食べる人の胃袋を一瞬でつかむと言われる「銀座梅林」の“ヒレカツサンド”は、エディターやフォトグラファーに多くのファンがいる。1927年(昭和2年)にとんかつ専門店としてオープンした同店は、日本の食文化を代表するトンカツにアレンジを重ね、進化させてきた。その一つが秘伝のソース。薬剤師だったという創業者の代から、味にもとろみにもこだわり、カツの味を引き立てている。「初代の祖父から、看板のトンカツだけにこだわりすぎることなく、ソースや揚げ油、米、付け合わせなどカツに合うものを考えてきた」と3代目の澁谷昌也さん。食の激戦区、銀座で受け継がれる味は唯一無二だ。
住所:東京都中央区銀座7-8-1 銀座梅林ビル地下1階
電話:03-3571-0350
時間:11:30~20:45(L.O.)
定休日:年中無休(1月1日を除く)