ファッション

おかえり、ルカ・オッセンドライバー! 「ランバン」退任から4年で「セオリー」でカムバックの心境は?

 ファーストリテイリング傘下の「セオリー(THEORY)」は9月7日、かつて「ランバン(LANVIN)」でメンズのアーティスティック・ディレクターを務めたルカ・オッセンドライバー(Lucas Ossendrijver)が手掛ける、メンズ&ウィメンズのカプセル・コレクション「セオリー プロジェクト(THEORY PROJECT)」を発売する。ルカは、13年に渡りメンズを統括してアルベール・エルバス(Alber Elbaz)と共に「ランバン」の黄金期を築いたが、メゾンはその後、エルバスの退任(2015年に発表)や後任のウィメンズデザイナーによる迷走、身売り(18年)などで低迷。ビジネスのあり方も、組織も、環境も、周囲の視線も変わる中、ルカはメンズだけはと数年間「ランバン」を守り続けたが、ついに18年に退任を発表して、4年ほどファッション業界の第一線から退いた。果たして彼は、この間何をして、どんなことを考え、そして今、ファッション業界の最先端にカムバックするのか?

「WWDJAPAN」(以下、「WWD」):「ランバン」を去ってからの4年間、一体、何をしていたのか?

ルカ・オッセンドライバー(以下、ルカ):「ランバン」で働き始めてから、時間がなくてできなかったことを楽しんだ。旅行に出かけ、友人とゆっくりした時間を過ごし、ガーデニングに夢中になって、教壇にも立った。ただ、ファッションへの愛は変わらなかった。寂しかったのは、「ランバン」で働いていた頃の仲間に会えなくなったこと。デザインチームやパタンナー、生産の担当者はもちろん、パリメンズの度にコミュニケーションを深めた演出家やプレス、スタイリストやフォトグラファーとも疎遠になった。改めてファッション業界は、情熱と才能に溢れる人たちと自由にクリエイションできる、とても特別な仕事だと感じたんだ。そんな中で「セオリー」から声をかけてもらった。柳井(正ファーストリテイリング会長兼社長)さんともお会いした。また同じような仕事、そして人々との結びつきを感じられるんじゃないか?と考えたら嬉しくなって、およそ1年前、今回のオファーを受け入れたんだ。

「WWD」:アルベールと築いた「ランバン」の黄金期を考えると、いろんなブランドから声がかかったはず。どうして「セオリー」からのオファーを受け入れた?

ルカ:「セオリー」、そして、この仕事が“今っぽい”と思ったんだ。「ランバン」と比べ、「セオリー」のスケールはずっと大きく、インパクトは絶大。多くの店に、たくさんの人に、そして「セオリー」に、「ランバン」で培ったラグジュアリーの経験を持ち込めると思った。魅力的なプライスポイント(コレクションのほとんどは、1万~12万円)で、ランウエイのためでもエディトリアルのためでもない、リアルな人々のために洋服を作るのは、とってもエキサイティングなことだ。

「WWD」:「セオリー」には、どんなイメージを持っていた?

ルカ:機能的で、目的があって、洗練されたデザインの洋服を提案している、魅力的なブランドだ。特定のコミュニティーのことを考えるのではなく、それぞれ異なるパーソナリティーを持つ多くの人のことを考えている。それは「セオリー プロジェクト」も同じだ。機能的で、信頼できて、シルエットは美しく、賞味期限もなく、自由にミックスできる、人々のワードローブ。同じシーズンのコレクションとコンバインしてもいいし、「セオリー」以外の手持ちの洋服と合わせても構わない。そして、そのコーディネイトが“自分らしさ”を表現する。そんな洋服を、「ランバン」時代の工場と一緒に作った。

「WWD」:「機能的」「信頼性」「自由にミックス」「リアルな人々の」「ワードローブ」……。「ランバン」時代のインタビューを彷彿とさせるようなキーワードだ。「ランバン」で働いていた頃も、今も、ルカのデザイン哲学は変わっていない?

ルカ:全く変わっていない。ただ今回は、より多くの人々に届くかもしれない可能性を持っている。違うのは、それくらいだ。勘のようなものを取り戻したり、4年前までの当たり前だった仕組みに慣れるのは簡単だった。一番大変だったのは、(コロナの影響で)最初はパリの自宅で、たった一人で仕事をしなくちゃならなかったこと。また「人々と結びつきたい」と考えて仕事を始めたのに、最初はたった一人で孤軍奮闘しなくちゃならなかった。幸い、しばらくしてニューヨークを訪れる機会があって、「セオリー」のチームが暖かく出迎えてくれた。以降、パリとニューヨークの行き来を楽しんでいる。ニューヨークを訪れ、カジュアルウエアについて考えることが増えた。パリはやっぱり、どこかでスーツやジャケットの国だから。

「WWD」:ウィメンズウエアは初挑戦だったが?

ルカ:自然な成り行きで、メンズとクロスオーバーするウィメンズになった。もう「ウィメンズだからイヴニング」なんて時代じゃない。人々は同じスタイルでオンとオフを楽しんでいるし、それがNYや「セオリー」っぽい。

「WWD」:「セオリー」とのカプセル・コレクションというと、オリヴィエ・ティスケンス(2011年春夏シーズンにカプセル・コレクションとして「ティスケンス・セオリー」を発表、翌11-12年秋冬シーズンから「セオリー」を監修した。14年に退任)を思い出す。ルカも、カプセル・コレクションではなく、「セオリー」全体を監修したい?

ルカ:まだスタートに立ったばかり(笑)、今はこれで十分だ。まずは「セオリー プロジェクト」をもっと極めたい。

「WWD」:特にメンズでは、ルカの「ランバン」退任後、「着たい洋服がない!」と悲しむ人も多かった。彼らにメッセージを。

ルカ:僕も寂しかったよ。まずはみんなが「セオリー プロジェクト」の洋服を着ているシーンが見たい。それがデザイナーにとって、一番の喜びだから。最新作だけじゃなくて良い。僕の洋服を自分らしく着ている人が見られたら、とても幸せだ。

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