コスメのパッケージはプラスチックかガラスだけだろうか?そして、外箱は使い捨てる以外にないのだろうか?現在は貝殻、海藻、野生の植物、紙など、さまざまな原料を用いた容器やサンプリング手法が生まれている。4つのスタートアップを紹介する。
ミニトマトを再現したノップラ
ノップラ(NOTPLA)は、「パッケージを消してしまおう」を謳う。持続可能な包装資材を開発するスタートアップ企業は、使い捨てプラスチックに代わるパッケージの普及を目指す。2014年、ロドリゴ・ガルシア・ゴンザレス(Rodrigo Garcia Gonzalez)とピエール・パスリエ(Pierre Paslier)が学生の時に起業した。
ノップラのマーケティングを担当するマルゴー・ダゲール(Margaux Deguerre)は、「液体をカプセルに閉じ込める方法を考えたとき、彼らは自然からインスピレーションを受け、ミニトマトを再現した」と言う。ノップラは、その名のとおりプラスチックではない素材、つまり海藻や植物といった、数週間で生分解されるものでできたパッケージをつくっている。
現在は多くのスポーツイベントやフェスに協賛し、食品容器を生分解仕様にするコーティング事業にも挑戦。海藻の繊維を使ったノップラペーパー、オイルを内包できるノップラ ピペットなども開発した。後者は水で溶けるため、使い切りシャンプーなどの容器に使用できる。マーケティング担当のダゲールは、「化粧品業界にも関心を抱いている」という。
100回繰り返し可能なアイディ・セント
アイディ・セント(iD SCENT)は、「におい」の商品化を考えた。香水のサンプリングを改革するのがねらいだ。
新たなテクノロジー、「センティスト」は、100%リサイクルできる紙に香水を含ませる。空気を圧縮させることで、香りを紙の繊維になじませるのだ。この方法を使うと、揮発しないアルコールフリーの香水なら数カ月から数年に渡って香りを楽しめる。
「ゲラン(GUERLAIN)」の“アクアアレゴリア ネロリア ベチバー”のサンプルは、香水のびんをイメージした紙の形で配られた。サンプルの上についている帽子のような部分を上に向かって引っ張ると、白いスティック上のサンプルが出てくる。このサンプルは、理論上は100回以上繰り返し使用可能だ。
10年前に始まったアイディ・セントは、サンプルを多くの人々が共有できるように作られた。フランスのブロンを拠点とし、自国で再生可能で環境に配慮した紙を生産している。
食感、見た目、匂いを再現するオーガノイド
オーガノイド・テクノロジー・ゲーエムベーハー(ORGANOID TECHNOLOGY GmBH以下、オーガノイド)は、商品の触り心地、見た目、においの再現をこだわり抜いている。ディレクターのアルプ・ベアール(Alp Behar)は、「オーガノイドが作ったサンプルの表面に触れても、まるで本物のバラの花びらに触れたり、香りを感じているように錯覚するでしょう」と説明する。オーガノイドは、フランス、ベルギー、ルクセンブルク、スイス、イスラエルといった国々に向けて販売している。
オーガノイドは、オーストリアのフリースで2018年に設立された。商品はすべて、カーボンニュートラルに取り組む、同国にあるチロルの山脈でつくられている。
べアールは、「オーガノイドは、コスメの販売に向いている」という。家具と一緒にディスプレイしたり、別の商品に同梱したりのサンプリングに向いているという。
またオーガノイドは、スキンケア用品やエッセンシャルオイルのような物質を貯蔵する役割を果たす天然の苔を使った、肌に貼るパッチ、ナットパッド(NatPad)という商品のために子会社もつくっている。ナットパッドは、オーガノイドの表面にもつけることができる。
廃棄される貝殻を地元で消費するマラキオ
マラキオ(Malakio)は、魚介類の殻をレストランから直接集めている。それらを押しつぶして、天然の粘結剤と混ぜるためだ。ローテクな作り方だからこそ、「二酸化炭素の排出を抑えることができる」と共同創設者であるヒューゴ・ケルマレック(Hugo Kermarrec)は言う。
マラキオは、再利用した素材を使った食器やインテリアの販売から家具の製造へと事業を拡大。現在は、コスメのパッケージを手がけている。マラキオの製品に使われている素材には隙間があるため、クリームやパウダー、水性のコスメを収めるのに適している。
マッスル貝や牡蠣、帆立貝の貝殻は、様々な色に変わる。「自然に着色できるのも特徴」とケルマレックは語る。現在はフランスのナントに拠点をおくが、もともとは同国のブルターニュで2020年に設立された。