2024年に開催予定のオリンピックに向けて、街全体が突貫工事中のパリ。エッフェル塔、オペラ座、オルセー美術館にグラン・パレといったランドマークから街中の建物まで、コロナ禍の休止期間を取り戻そうと改装は急ピッチで進んでいる。パリ観光局が5月上旬に発表した最新の報告によると、外国人観光客の数は4月のイースター休暇でコロナ禍前の水準にほぼ回復。ロシアとアジア諸国からの観光客が極端に少ない中でも、7月には19年を超える見通しという(結果はまだ報告されていない)。パリ市民にとって、行列のないガラガラのルーブル美術館の光景は、既に過去の思い出となった。
他国同様、度重なるロックダウンと厳しい制限は経済危機を深刻化させたが、企業の飛躍と失速の明暗は分かれている。高級食品店「フォション(FAUCHON)」は破たん申請を行い、自動車メーカーのルノー(RENAULT)は1万5000人を人員削減、日系企業ではタイヤメーカーのブリヂストンが工場を閉鎖した。観光客頼みだった、小規模の個人商店やレストランは閉業を余儀なくされたようだ。同時に、終わりは始まりを意味し、パリには多ジャンルの店が続々とオープンしている。また、困難な局面を乗り越えて、コロナ前よりも業績を伸ばした企業も数多い。
好例として挙げられるのが、北マレに位置するコンセプトストア「トム グレイハウンド パリ(TOM GREYHOUND PARIS)」。韓国の財閥ヒョンデ(HUNDAI)の傘下で資金面での大きなバックアップがあるとはいえ、コロナ前は全顧客の30%を占めていたアジア観光客が不在とあって、先行き不透明だったのは他の企業と同じ。アフターコロナを見据えて同店は20年3月、最初のロックダウンが始まったタイミングでECをスタートした。ECと実店舗の2本柱で、19年と比較して今年6月の利益成長率は15%、さらに14年のオープン以来最高の消化率を誇るという。ECを始めた効果は、売り上げだけではないとヘッドバイヤーのエカテリーナ・グラズノヴァ(Ekaterina Glazunova)は分析する。「若い世代の顧客は、事前にECでラインアップを確認してから実店舗に足を運ぶ。店内の滞在時間は非常に短く、効率的に買い物ができるコンセプトストアにメリットを感じているようだ」。コロナ禍でデジタルを通じて積極的にコミュニケーションを図り、特にローカルの若い世代にリーチできたことで、現在最も活気あるコンセプトストアとして成長を続けている。
日本ブランドがメインなど
活況の二次流通は細分化
二次流通市場が活況を迎える中、パリにも多くのビンテージストアがオープンした。競争の激しいこの分野では、アフターコロナの新たな傾向が見えてきた。
定期購読についてはこちらからご確認ください。
購⼊済みの⽅、有料会員(定期購読者)の⽅は、ログインしてください。