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20周年の集大成「アンリアレイジ」劇場 前代未聞のデジタルとフィジカルが交差するリアルショー

 来年20周年を迎える「アンリアレイジ(ANREALAGE)」が9月2日、リアルのショーは2年半ぶり、東京では3年ぶりとなるランウエイショーを行った。「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」冠スポンサーの楽天による支援プロジェクト「バイアール(by R)」のサポートによるもの。ショーは3Dプロジェクターを用いて、映像のモデルと、現場のモデルが一緒にランウエイを歩く、デジタルとリアルを融合させた驚きの演出で、ブランドテーマである“日常と非日常”を体現した。コロナ禍にデジタル上で発表してきた過去4シーズンのコレクションと、原点であるパッチワークを使った最新コレクションを登場させ、ブランド20周年の集大成といえる壮大なショーとなった。

ピンチをチャンスに転換
コロナ禍で培ったデジタル表現

 今季のテーマは「A & Z」。AとZは最初と最後のアルファベットで対極にあるが、円にすれば隣同士である。「アンリアレイジ」のブランドロゴは、そのAとZという象徴的な2文字を組み合わせたものである。「Zは終わりではなく、始まりだ」というデザイナーの森永邦彦。20周年の節目をZ地点とし、新たなA地点からの歩みをこのショーで垣間見た。
 
 コロナ禍でリアルショー開催が叶わなかった過去4シーズンは、パリコレ公式スケジュールでデジタル配信を行った。「リアルなショーができず絶望した」という森永デザイナーだったが、ただコレクションを動画に収めるだけでなく、“デジタルでしか実現できないこと”をとことん追求した。富士山の麓で撮影した21年春夏「ホーム(HOME)」に始まり、天地を逆転させた21-22年秋冬「グラウンド(GROUND)」、細田守監督の作品「竜とそばかすの姫」との協業で、アニメーション世界の二次元と三次元を交錯させた22年春夏「ディメンション(DIMENSION)」、そして宇宙服から着想し、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙探査実験棟で撮影した22-23年秋冬「プラネット(PLANET)」と続く。NFTやメタバースにもチャレンジし、モノ作りでもパターンメイキングをデジタル化。逆境に屈することなく、ピンチをチャンスに変えて、新しいことに果敢に挑んできた。

映像のバーチャルモデルと
リアルなモデルたちが交差

 リアルなショーを再び行う決断をしても「この2年間デジタルで培ったことをリアルな場でも形にしたい」と、今回のショーでその融合を目指した。ショーの前半は、舞台に透け感のあるスクリーンを設置し、3Dプロジェクターで映像を投影。スクリーン越しにいるモデルたちが映像に合わせて歩く仕掛けだ。21年春夏「ホーム」では球体や立方体など服の原型となった形や、ショーに出しきれなかった追加のルックを3Dで登場させ、21-22年秋冬「グラウンド」では、地を歩くモデルと対になる、宙吊りで天井を歩くモデルたちを映し出した。22年春夏「ディメンション」では、三角形のポリゴンを用いたルックを映像で二次元、リアルなモデルで三次元として見せ、22-23年秋冬「プラネット」では月面を浮遊して歩く映像のモデルたちと、リアルなモデルたちを交差させた。デジタルとリアルを完全に融合し、大画面を見るショーは劇場さながらだ。

“20年後の原風景”
パッチワークの最新作

 過去4シーズンのショーを終えると、これまで投影した映像を倍速で逆再生して時間を巻き戻す。その後暗転してスクリーンがはがされ、再びショーが始まった。出てきたのは、「アンリアレイジ」の原点であるパッチワークの新たな2023年春夏コレクションだ。パッチワークシリーズは森永が学生時代、当時アルバイトしていた生地屋で大量に捨てられていた端切れを回収して作り始めた。約1000パーツの細かい生地を縫い合わせ手作りし、現在もメインコレクションとは別で販売を続けている。
 
 今季はその原風景を振り返り、デビューから20年後のパッチワークに挑んだ。初期からシャツやジャケット、ジーンズなどシンプルなアイテムをベースとしているが、今回のコレクションでは、過去に発表したアイコニックな形を踏襲してアップデートさせている。1着にシャツ地やスーツ地、デニムなどの異なる小さい生地を2000〜3000ピース使用。足元のスニーカーやブーツにもパッチワークを施した。森永は「まさか、20年後までパッチワークを続けているとは想像していなかったが、未来に進んでいるつもりでも過去に戻っていることもある。このコレクションもまた意味を持って、未来につながるかもしれない」と笑う。

“日常と非日常”は
次のステージへ

 9月末にはパリ・ファッション・ウイークで、ひさしぶりに現地でのショーを行う予定で、このコレクションはその一部にあたる。パリでは「エイジ(AGE)」がテーマだという。
 
 今後については「20年を迎えて、次のステージに行くため、これまで続けてきたことをぶらさずにやっていく。世の中にはその倍の40年、60年とやっているブランドがたくさんある。そういうブランドを目指したい」と森永デザイナー。日常を非日常に変えるデザインに、真摯に向き合ってきた「アンリアレイジ」は、これからも人々を驚かせる新しいファッションのあり方を示してくれるだろう。

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