ファッション
連載 東京・コレクション

「クードス」「スドーク」の初舞台は王道のショーを再解釈 同性婚の実現を願うマリエルック

 工藤司が手掛ける「クードス(KUDOS)」と「スドーク(SODUK)」は、「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」に初参加し、2023年春夏コレクションをランウエイショーで披露した。文化庁が主導する、日本の芸術文化の振興を図る「日本博」の支援によるもの。メンズを中心とした「クードス(KUDOS)」と、“KUDOS”を反転させた名前を付けたウィメンズブランド「スドーク(SODUK)」は、文字通り”鏡”のような2つのブランドだ。「クードス」は実験的でセンシュアルなメンズウエアがあり、「スドーク」ではひねりを加えながら、より日常的で手に取りやすいアイテムをそろえているのが特徴である。その2ブランドをミックスし、50人のモデルを起用した60ルックで東コレの初舞台に臨んだ。

複雑な想いを胸に
同性婚の実現を願うマリエルック

 工藤デザイナーが目指したのは、昔ながらの王道のファッションショーの再解釈。それを実現するための仕掛けがたくさんあった。まず、招待メールには「白い装いを取り入れたドレスアップをお願いします」と綴り、白のドレスコードを設けた。そのため大半の来場客が白を取り入れたコーディネートで出席(これの説明は後ほど)。またショー中のスマートフォンでの撮影を禁止した。工藤デザイナーは「携帯がなかった時代のクラシックなショーのように、服を集中して見てもらい、フィナーレでは拍手をしてほしいと思った」と説明する。

 ファーストルックは、マクラメ編みのベールを被った白いジャケットのセットアップを着たメンズモデルと、生花や植物を全身に装飾したシャツドレスを着たメンズモデルの2人。その次のルックも、全身白いコーディネートのメンズモデル2人組だった。これは、ファッションショーのラストに登場するウェディングコレクション“マリエ”を表現した演出で、ショーの順番を反転して最初に登場させている。ゲイであることをオープンにしている工藤デザイナーは、日本で同性婚が認められないことに疑問を抱いてきた一人。今回登場させたマリエは、裾や袖が破れていたり、切りっぱなしのディテールを取り入れたりと、完全ではないフラジャイルな雰囲気を感じさせた。

 デザイナーの出身地である、沖縄も重要なキーワードだ。今年が沖縄の本土復帰50周年という節目であることから、故郷にまつわる要素を先シーズンから取り入れてきた。琉球ガラスを使ったアクセサリーをはじめ、米軍のグラフィックやミリタリーウエアにヒントを得たデザインがポイントだ。さらにショーのBGMは、工藤デザイナーと親交が深い、ラッパーやDJ、トラックメイカーとして活動するキッド フレシノ(KID FRESINO )が一からオリジナルで作り上げた。

5年目の大舞台
会場にはハッピーなムード

 白いドレスコードが必要だったのは、来場客が結婚式に参加しているような明るさが必要だったから。また平均的なショーの倍にあたる60ルックを用意したのは、昔ながらの長いショーの模倣だったという。工藤デザイナーは「いつ終わるの?という感じで、見ている人を飽きさせたかった(笑)」というが、会場には感動で涙を流すゲストもいて、拍手喝采だった。きっと、撮影禁止の効果もあったのだろう。しかし最後にはデザイナー本人が出てきて「もう一度フィナーレを行うので、自由に撮影ください」とあいさつすると、モデルが再び登場し、来場者はスマートフォンを向ける。会場は終始ハッピーなムードに包まれていた。

 ショー後には「時間が足りず疲れたけれど、とても楽しかった。またショーをやりたい」と一言。6月に行った「クードス」のプレゼンテーション後に東コレ参加の誘いが届いたため、準備期間はわずか2カ月。確かに、制作期間は短かった。だが同時に、短期間でこれほど壮大なショーが作れる実力も見せつけたとも言える。ギミックと遊び心がある工藤司のクリエイションは、見るものを明るくする力がある。「クードス」を18年春夏シーズンにスタートして5年目。ショーという一つの大舞台を終えて、今後はどんなコレクションを見せてくれるのか楽しみだ。

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