毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2022年9月5日号からの抜粋です)
横山:超低価格ファストファッションの「シーイン(SHEIN)」を取材したいと考えましたが、最初は連絡先すら分からず、でした。でも、一緒にイベント協賛していたブランドに「シーインについて教えてください」と頼んだら、ジャパン社の人を紹介してもらえて今回の特集が実現しました。
村上:横山さんと一緒にジャパン社の社長に会ったけれど、「アパレルじゃない、テクノロジー企業だ」と言っていたのが、すごく印象的でした。
横山:未上場企業なので、情報開示の必要がなく、厚いベールに覆われています。今回、23の質問を投げかけ、公式見解をもらいました。売上高などは無回答なのですが、それも含めて全ての回答を特集で公開しています。
村上:5月末に「ショッピング分野ではアプリのダウンロードランキングが常に1位」と聞いて以来、ずっとチェックしていますが、全体でも5位から7位あたりを行ったり来たり。単体のブランドとしてそれだけのダウンロード数があるのは、驚き。つまり新規を獲得し続けているので、まだまだ伸びそうです。
横山:そうですね。サプライヤーは中国に千単位でいるけれど、ECのみで店舗がなく、中国の倉庫から直接消費者の手元に届けるから、いわゆる販売に関わる取引先が従来のアパレル小売業と比べて極端に少ない。だから情報も少ないのでしょうね。今回寄稿してもらったジャーナリストの高口康太さんによると年商は200億ドル(約2兆7600億円)を超えているそうです。つまりファーストリテイリングと同じか、それ以上の規模かもしれません。
村上:異様な規模感だよね。でも、“環境破壊を助長している”という批判にさらされたり、コピー問題の訴訟が後を絶たなかったりしているので、そろそろ対外的なコミュニケーションも必要になってきたんじゃないかな。
横山:そうですね。越境ECで多くの地域に「輸出」している形なので今後は複雑な法規制に対応する必要も出てきそうだし、政治的なリスクもあります。ただ、中国のD2Cの流れを組んだ大成功例の1つであり、ファストファッションの究極版です。まさに新潮流だと注目しています。