ファッション

8月に破たんした三崎商事のスポンサーに名乗り、「アパレルReSTARTファンド」って何者なの?

 名門インポーターの三崎商事は8月1日、民事再生法の適用を受けた。再建を後押しするスポンサーとして現れたのが、アパレルReSTARTファンドだ。同社は、監査法人やM&Aコンサルティング企業で企業再生やM&Aなどを手がけた倉本大樹氏が2020年に立ち上げたReSTARTグループ傘下の企業で、20年6月からは神戸の中堅アパレルであるハヴァナイストリップの再建を手がけている。キーマンであるアパレルReSTARTファンドの高橋浩二社長CEOと、ReSTARTグループ代表で、アパレルReSTARTファンドの倉本大樹CIOの2人を直撃した。

WWDJAPAN:アパレルReSTARTファンドの概要は?

倉本大樹(以下、倉本):監査法人やM&Aコンサルティング会社などを経て、2020年にM&Aのコンサルティングやファイナンス支援などを行うReSTARTグループを立ち上げた。その事業の一つとして、アパレルのハンズオン型の再生ファンドとしてスタートしたのが、アパレルReSTARTファンドだ。アパレルReSTARTファンドは、ハヴァナイストリップを軸にファブリックブランドの「レ・トワール・デュ・ソレイユ(LES TOILES DU SOLEIL) 」、ファクトリーエクスプレスジャパンなどを展開しており、グループの年商は合計で10億円ほど。全体の従業員数は70〜80人になる。

WWD:三崎商事の支援スポンサーに名乗りを上げた。その理由は?

高橋:三崎商事のスポンサー支援に関しては基本合意書を締結した段階であり、今後について詳細を話すことはできない。現時点で言えるのは、三崎商事がこれまでと変わりなく事業を継続し店舗の営業も継続していく、ということだけ。ただ、三崎商事は「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」を筆頭に数々の有力ブランドを取り扱ってきた名門企業で、現在も「ゲラルディーニ」という優良ブランドを展開している。会計上の数字以上の資産を持ち合わせており、非常にポテンシャルが高い。日本のアパレル産業全体を考えても、再生には重要な意義がある。

倉本:これは三崎商事に限定した話ではなく、あくまで一般論だが、戦略や見方を変えるだけでも、再生や再成長できるアパレル企業は多い。日本市場に限定していたビジネスを、アジアやグローバル市場に再設定すれば、新しい展開が見えてくる。

WWD:20年6月から再生に取り組んでいるハヴァナイストリップの現状は?

高橋:再建前に50店舗ほどあった店舗は、不採算店舗の閉鎖と出店をあわせて行い、現在は18店舗。生産の仕組みなどを整えたことで、利益率も改善しており、すでに黒字になっている。

WWD:再生のポイントは?

高橋:実際にはそう難しいことをやっているわけではない。改革は現在進行系だが、市場調査や競合調査をやった上で、これまで前年踏襲型だったやり方を改め、精度の高いMDを組むような仕組みに変えていくなど、無理・無駄を徹底的に減らしていった。全くのゼロではないが、人員削減などもわれわれがスポンサーになってからはほとんど行っていない。今年の秋冬に向けては、外部ディレクターにセタイチロウ氏を起用し、生産面では一部を工場との直接取引に移行するなど、利益率の向上も見えてきた。私自身が長く企画や生産畑を歩んできたこともあり、この部分は最初の組み立てはまさにハンズオンだが、いちど構築することで、引き継ぐようなやり方を取っている。これらに加えて、ECを本格的にスタートした。これは大きい。当社は、グループ内企業のECを垂直的に立ち上げて、その後は実際の運営を移行するチームを作っており、ハヴァナイストリップでもこのチームの下、かなりスピーディーにECを立ち上げられている。今後はさらに黒字体質になっていくはずだ。

WWD:多くのアパレルが赤字や不採算事業に苦しんでいると言われるが、課題をどう見る?

高橋:MD不在ということが一番大きいのではないか。アパレル企業の多くは年商数十億円規模の企業が多く、実際には競合分析や商品構成、商品発注、売り上げ分析などをきちんと行って、かつ実施している企業がかなり少ない。その一方で実は数字のデータはエクセルであれ、クラウド上であれ、意外と揃っている。勘や属人的なやり方、あるいは前年踏襲でなんとなく毎年商品を発注して、在庫になってしまっている。余力がないから、ECのような新規分野にも経営資源を投じられず、負のスパイラルに陥っている。

倉本:これまでアパレルに限らず、多くの業種・業界の再生に関わってきた。アパレルは市場が縮小しており、一部の機関投資家からは魅力がない業界とも思われている。だが、私からすると逆に伸びしろが大きいとも思っている。データドリブンなMD管理や計数管理、EC関連のリソースの提供などで、見違えるような業績回復を行う事例も少なくない。その上で、アジアを筆頭にしたグローバル市場を視野に入れることで新しいビジネスの形も見えてくる。

WWD:具体的には?

倉本:現在は水面下で大型プロジェクトを進めており、現時点では公表できない。一昨年にReSTARTファンドアパレルを立ち上げてから、かなり多くの問い合わせをいただいており、それだけ悩んでいる企業が多いことは確かだ。日本のアパレル産業の活性化には、中小・中堅企業の再生が不可欠だ。これからも全力で取り組んでいく。

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