中国企業が運営するグローバルECブランド「シーイン(SHEIN)」が、日本市場でも急拡大している。150カ国に商品を販売する一方で、リアル店舗を一切持たず、販売はECサイトかアプリのみ。トップスなら200円から販売し、未上場企業であるため売上高は公開していないものの、200億ドル(約2兆7600億円)に達したという中国の経済メディアの報道もある。日々数千アイテムに上る膨大なアイテムをアップし、中国の巨大倉庫から消費者に直送するビジネスモデルの実態に迫った。(本記事は9月5日号「WWDJAPAN」からの転載です)。
中国の有力な経済メディア「晩点Latepost」が報じたところによると、「シーイン」の2021年の売上高は、前年からほぼ倍増の200億ドル(約2兆4000億円)前後に達しているという(下段の高口氏寄稿記事参照)。これが事実ならアジア最大のアパレル小売企業である日本のファーストリテイリング(2兆2500億円、22年8月期見通し)や米国のギャップ(1兆9278億円、22年1月期)を超え、「ザラ」を展開するインディテックス(3兆5659億円、22年1月期)や「H&M」を展開するH&Mヘネス・アンド・マウリッツ(2兆4341億円、21年11月期)といった大手グローバルSPAの一角に食い込む、衝撃的な数字だ。日本のアパレル関係者には、実態がつかみづらい状況であるが、それだけ「シーイン」は異例尽くしなのだ。
ECのみの無店舗販売:150カ国で販売している一方で、リアル店舗はゼロ。そのため中間流通のステークホルダーが極端に少ない。従来であれば、出店先の商業施設や卸先のセレクトショップ、日本での物流を担う倉庫などが関わってくる。こうした場合に取引開始にあたっての情報公開が必要となるが、「シーイン」はこれらのほとんどを必要としていない。デジタル技術を駆使して、少量生産・販売した売れ筋を超速で分析し、数千ものサプライヤーに発注し、極限まで無駄な生産を省いている。
越境型のビジネスモデル:大半のアイテムは、「シーイン」の広大な自社倉庫から航空便で消費者に直接届けられている。つまり消費者は「シーイン」のアイテムを「個人輸入」していることになる。日本の場合、大半のファッションアイテムは送料を含めて1万数千円以下の製品には関税や消費税がかからないため、「シーイン」購入時に購入金額が1万数千円以下であれば、関税や消費税が免除されている。
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