ファッション

元AKBこじはるがランジェリーブランド「ロジア」立ち上げ サイズの多いブラジャーをECでどう売る?

小嶋陽菜(こじま・はるな)/heart relation代表取締役CCO

1988年4月19日生まれ、埼玉県出身。2005年にアイドルグループAKB48のオープニングメンバーオーディションに合格。2017年にAKB48を卒業後、18年6月にブランド「ハーリップトゥ」を所属する芸能事務所の中で開始。事業拡大に伴い、20年1月に新会社heart relationを立ち上げ、22年2月から現職

 小嶋陽菜が代表取締役CCO(チーフクリエイティブオフィサー)を務めるheart relationは9月26日に、ランジェリーブランド「ロジア バイ ハーリップトゥ(ROSIER BY HER LIP TO)」の販売を開始する。2018年6月に立ち上げたライフスタイルブランドの「ハーリップトゥ」はECを主販路に急成長し、この7月には東京・神宮前に初の直営店もオープンした。「ハーリップトゥ」で蓄積したノウハウを生かし、新ブランドもECを主軸とするが、ランジェリーは通常のアパレル以上に触り心地やサイズが重視され、ECで売るのは難しい。開発の経緯やECでどう売っていくのかを取材した。

 ランジェリーは小嶋CCOが「ずっと作りたいと思っていた」と語るアイテム。「『ハーリップトゥ』の服に対して、『着ていたらほめられた』『自分に自信が持てた』といった声をお客さまからいただく。服でもそんなふうに感じてもらえるのなら、直接肌に触れてその人の土台を作るランジェリーは、着る人の自信にさらにつながるはず」と強調する。

 第1弾として発売するのは、ノンワイヤのブラジャー(税込4800円)とナイトブラ(4600円)、ショーツ2型(2600円、3300円)の計4型。ノンワイヤブラのカップサイズはB〜Eで、アンダーバストのサイズ(65〜75)との組み合わせで計10サイズをそろえる。ナイトブラとショーツ2型は、それぞれS、Mの2サイズ展開だ。

「アパレルの延長では作れない」

 ランジェリープロジェクトが社内で実際にスタートしたのは2〜3年前。手探りで始めたアパレル事業が軌道に乗ってきたころだ。ただ、同じ衣料品であっても、アパレルとランジェリーは使用する素材もパーツも、専門とするメーカーも異なる。1人1人違う体形に正確に沿わせ、補整し、それでいて快適な着心地を追求するためには専門的な知識が不可欠だ。「最初は好きだから作りたいと思ってスタートしたが、服とランジェリーはモノ作りが全く異なる。ランジェリーのOEM(相手先ブランドによる生産)メーカーと話しても、こちらに知識がないから共通言語が持てない。アパレルの延長ではランジェリーの企画はできないと気づいた」。

 そうした経緯で一時中断していたランジェリー事業が再び動き出したのは約1年前だ。ランジェリー業界歴20年以上というベテランデザイナーがチームに加わったことが契機となった。ただ、そこからはトントン拍子だったというわけでもない。ノンワイヤブラは最初に1つのサイズを完成させるために5回サンプル修正し、1サイズができたらそこから他サイズに取り掛かっていった。「普通はここまで細かく突き詰めてサンプル修正はしない」とベテランデザイナーも振り返る。「ノンワイヤでもバストをしっかりホールドし、補整できる作りにするのは、ワイヤありで作るよりも難しい。サンプルができ上がる度に社内のできるだけ多くのメンバーに実際に身につけてもらって、そのフィードバックを修正に生かしていった」と小嶋CCO。

 甘く華やかなデザインが中心の「ハーリップトゥ」に対して、第1弾のランジェリー4型はややシンプルなイメージ。その中で、繊細なレースやギャザーのディテールで肌やデコルテをきれいに見せることを目指した。「私自身、20代のころはレースなどの飾りがたくさんついたランジェリーが好みだったが、今はランジェリーの市場全体として着心地や機能性重視になり、ミニマルでラクなもの、スポーティーなものが主流になっている」という分析がその背景にある。だからといって、マーケットニーズをそのまま形にするだけならわざわざ手掛ける意味もない。「単に機能的でミニマルなだけでは私は満足できない。シンプルでも色気のあるデザインを追求した」という。

初回は無料で返品可能に

 最大の課題である、「サイズが多様なランジェリーをECでどう売るか」についてもさまざまな取り組みをしている。新ブランドは、「ハーリップトゥ」の既存ECサイトとは別のサイトを立ち上げて販売するという(7月にオープンした神宮前の直営店でランジェリーを扱うかは未定)。既存サイトの中で売った方が間違いなく効率はいいが、あえて別サイトを立ち上げるのは「初回購入時は無料で返品可能」とするためだ。「(初回返品無料を含め)カスタマーサービス対応がアパレルとは異なるため、サイトを別にした。2サイトあることで運営にはより手間がかかり、返品対応も煩雑ではある。それでも、多くの方にたくさん試着をしてもらい、つけ心地のよさを実感してもらうためこの形にした」。また、物理的な面でのサイズ対応としては、ノンワイヤブラジャーのホックを4段階にしている。一般的には3段階が多いが、アンダーバストのサイズをより柔軟に合わせるための工夫だ。

 サイズ別の在庫の積み方は手探り。「このブランドではどのサイズが売れるか、サイズの分からないECでランジェリーを買うとき、お客さまがどういった買い方をするかといったことは社内でかなり議論はした。ただ、発売してみないと分からないことは多いので、少しずつ知見を溜めていきたい」。

 実は「ハーリップトゥ」の商品に関して、小嶋CCOやブランドのオフィシャルSNSに届く質問で一番多いのが、ランジェリーについてなのだという。「インナーにどんなものは着ればいいのかという質問に応えるために、今後はワンピースをきれいに着こなすためのボディーシェイパーなども『ロジア』で作っていきたい」と小嶋CCO。アパレル、ビューティアイテム、ランジェリーとアイテムの幅を広げてきたが、「ランジェリーで土台を作り、ビューティアイテムで美しさを磨いて、服を着て気分が上がる。全ては自分自身を愛することにつながっていく。次に新しいアイテムを作るとき、この考え方に基づいている」と語る。

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