ニューヨークのいたるところが星条旗カラーの赤と青、白で染まった9月11日の夜、「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」が、マンハッタンの東側を臨むイーストリバー沿いのブルックリン、ウィリアムズバーグでショーを開催した。午後から降り始めた雨の影響で、マンハッタンの高層ビルは雲に包まれ、会場までの道のりの景色は少しくすんで見えた。ところが会場に到着すれば、これまでグレーだった景色に赤と青、白のロゴや壁面に描かれたタギング(スプレーで描かれた落書き)やアートが現れ、ゲストたちの気分を盛り上げた。
すぐ買える“シー・ナウ・バイ・ナウ”のコレクションで世界を巡業していた同ブランドがホームであるニューヨークに戻ってきた。トミー・ヒルフィガーは、「“ただいま!と言える”ホームに帰ってくるのは、このうえない喜び」と語る。今シーズン着想を得たのは、アメリカが誇るポップアートの巨匠、アンディ・ウォーホル(Andy Warhol)だ。
ニューヨークのアンダーグラウンドなカルチャーが最強に元気だった1980年代、トミーは初めてアンディと会った。アンディはトミーをNY中のクールピープルとつなぎ、クリエイティビティは開花。互いに刺激しあったことでアイデアとトレンドがエネルギッシュに花咲いた経験を、今回のコレクションに落とし込んだという。会場中央の広場には、かつてアンディがしたように、トミーが招待したNY中のファッショニスタが集まっていた。
日が落ち始めると、雨足は少し強くなって寒いくらいだったが、ケイト・モス(Kate Moss)が会場入り。ショーが始まると、空気は一気に情熱的に変わった。
着心地のよさそうなグリーンのセットアップジャージは、アメリカらしいフットワークの軽さを体現しつつも、オレンジのロングブローグと合わせて洗練されたムード。アクセサリーはブラックウォッチ柄で、プレッピーな伝統を組み込むことも忘れない。メンズでもウィメンズでもキュートなのは、スーパーロング丈のラグビーシャツ。イエローとライトブラウン、グリーンとブルーなどの明るい色のストライプは、春に袖を通したくなるだろう。ブルゾンやアメフトジャケットのようなアウターも、ボリューミーなシェイプ。オーバーサイズなシルエットの流行と気分は、もう少し続きそうだ。いくつかのバッグやバッグパックは、オーバーサイズというよりマンモス級のビッグサイズ。極小バッグの流行から、大きいサイズの気分へとシフトチェンジするかもしれない。
そんなフィアレス(恐れを知らない)でポジティブなルックを着こなすモデルたちの多様性や個性は大胆かつ可憐だ。そのバラエティの豊かさは、そのまま今のアメリカを表現している。人種や出自、年代、性別、サイズのカテゴリーはさまざまだけれど、そんなさまざまな人が集まるのがニューヨークであり、精力的な人々がいまだかつてなく元気なアメリカを形成している。
21年前に起きたことは大変だったが、ニューヨーク、そしてアメリカは、一致団結して逆境の乗り越えるときこそ輝く。コロナのパンデミックを乗り越える今も、輝けるはずだ。