「OAMC」は、新たなプロジェクト“リワーク(RE:WORK)”を2022年に立ち上げた。同プロジェクトは、捨てられたり、着古されたりした服に、新しいデザインアイデアを組む込むというアップサイクルの試みだ。服を再利用すると同時に、ビンテージの服や生地を新しく生まれ変わらせるための技術開発を目的に掲げている。2022-23年秋冬シーズンの価格帯はアウターが20万円前後で、シャツ11万台円〜、パンツ8万円台〜とメインコレクションと同等だ。日本ではロンハーマン(RON HERMAN)のほか、エディション(EDITION)、ビオトープ(BIOTOP)、パブリック(PUBLIC)、トラリ(TLALLI)で販売している。
ブランドを率いるルーク・メイヤー(Luke Meier)は、これまでもミリタリーアイテムをアップサイクルする“ピースメーカー(PEACEMAKER)”などでビンテージの再解釈に挑んできた。“リワーク”を新たなプロジェクトとして始動させた狙いとは――メイヤーに聞いた。
ファッションの発信力を信じて
WWD:“リワーク”を立ち上げた理由は?
ルーク・メイヤー(以下、メイヤー):“リワーク”は、さまざまなデザインアイデアをリスペクトし、使われなくなった服や素材を用いた新しい服作りだ。このプロジェクトを通じて生まれ変わったアイテムが人々に着用され、新たな価値を感じる機会を生み出せるはず。同じく、リメイクの手法を取り入れてきた“ピースメーカー”が服を使ってメッセージを伝える方法だとすると、“リワーク”はコレクション全体でのアプローチである。
WWD:“ピースメーカー”は「OAMC」の中では価格帯を抑えたエントリーとしての役割も担ってきたが、“リワーク”はインラインと近い価格帯だ。
メイヤー:私たちが服作りで大切にしているのは価格よりも価値であり、適正だと考えた価値で服の価格を決めている。「OAMC」にとって“ピースメーカー”はメッセージであり、“服”という感覚ではない。これまでさまざまな作品に“PEACEMAKER”という言葉を使ってきたし、これからも使い続けると思う。
WWD:では“リワーク”で「OAMC」らしさをどう表現している?
メイヤー:まず、メインラインと同じクオリティであること。「OAMC」はもの作りに一切妥協しないので、その点はとても大切だ。また、作品の文脈の中で新しいかたちやアイデアに取り組むことも同じぐらい重要であり、それが“リワーク”の醍醐味でもある。
WWD:“リワーク”でまずミリタリーアイテムを扱った理由は?
メイヤー:「OAMC」でミリタリーアイテムを数シーズンにわたって扱ってきたため、構造や形、染色、仕上げなどの面で、どのように手を加えればいいかを理解していたからだ。最初の2022年春夏コレクションでは、主にビンテージやデッドストックのミリタリーピースを使った。 事前にリサーチを念入りに行い、原料の調達や服の選定をしている。これからはミリタリーウエアだけでなく、探求の幅をさらに広げていきたい。
WWD:製品を作り続けるファッション産業が、サステナビリティを掲げるには矛盾があるという意見もある。
メイヤー:確かに、非常に強い矛盾がある。“リワーク”は服や生地をアップサイクルしているため、サステナビリティの要素を含んではいるが、完全な持続可能性にはほど遠いのが現状だ。サステナビリティを実現するためには、業界自体で仕組みを変えないといけない。 私たちはサプライチェーンを理解し、それに応じてできる限りの調整を試みている。例えば、全てのサプライヤーに、材料の改善と新しいソリューション提供を働きかけたり、輸送のより良い方法を模索したり、害の少ない素材や技術を使う方法を理解しようと努めている。 私たちは日々、改善に向けて取り組んでいる。
WWD:“ピースメーカー”で平和への願いをもの作りに込めてきた作り手として、ファッションが人々に貢献できることは何だと考える?
メイヤー:ファッションデザインはコミュニケーションの一つだ。 もちろん、私たちが作るものは必需品ではなく、ぜいたく品であることを理解しないといけない。 しかし、私たちにはオーディエンスがいて、発信力がある。だからポジティブなメッセージを届けられるのであれば、これからも積極的に発信していきたい。 ただ私自身も、世の中がもっとポジティブに変わることを願う一人の人間である。 私たちがもの作りを通じて発信したメッセージをたくさんの人が受け取り、前向きなアクションを起こすきっかけになればうれしい。