企業が期ごとに発表する決算書には、その企業を知る上で重要な数字やメッセージが記されている。企業分析を続けるプロは、どこに目を付け、そこから何を読み取るのか。この連載では「ユニクロ対ZARA」「アパレル・サバイバル」(共に日本経済新聞出版社)の著者でもある齊藤孝浩ディマンドワークス代表が、企業の決算書やリポートなどを読む際にどこに注目し、どう解釈するかを明かしていく。今回は前回の内容を踏まえ、収益を生むBS構造を3社を例に解説する。(この記事は「WWDJAPAN」2022年9月12日号からの抜粋です)
今回はアパレル専門店大手3社、「ザラ」を擁するインディテックス(INDITEX)、「ユニクロ(UNIQLO)」「ジーユー(GU)」のファーストリテイリング(以下、FR)、しまむらのPL(損益計算書)とBS(貸借対照表)を比較し、それらの収益構造にどうBSの構造が影響しているかを解説します。
まず3社のPLを並べてみると、「売上原価」と「売上総利益(粗利)」の比率が明らかに違うのが見てとれます。インディテックスが一番ハイリスク、ハイリターン型です。店舗、倉庫、インフラに投資して内製化することで、高速サプライチェーンを実現し、販売期間の短いトレンド商品を、値下げを最小限に抑えながら販売。55%以上という高い粗利を稼いでいます。
一方、ベーシックアイテムは競争が激しいため、高い粗利が取れないもの。FRは50%前後の粗利率でも販管費を抑え、十分な営業利益を残しています。
しまむらは売上原価率が60%台後半と、かなり原価に近い価格で商品を販売して消費者の支持を得ようとするバリュー重視の構造です。粗利率は30%強ですが、家賃を抑え、少ない人員で大型店舗を回せるように、作業を簡素化し、ローコストオペレーションに徹することで販管費を小さく抑え、営業利益を残しています。
どのように運営して利益を残すかは、どんな「販管費」に、どれだけかけているかに表れます。店舗中心の小売業なので、PLだけ見ると「人件費」や「地代家賃」がメインなのはどこも変わらずですが、インディテックスに「広告宣伝費」がないことや、FRでは、近年ECが拡大したために、「物流費」や「業務委託費」が増えていることに気付くことでしょう。FRは昔からアウトソーシング主義ですが、時代の変化によって、そんな費用にも表れています。
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