アッパーイーストサイドに建設されたのは、さまざまなモノやコトが行き交い、人と人をつなぐ埠頭(ふとう)。「コーチ(COACH)」のショーは、新進気鋭のラッパーで今もっとも波に乗るアーティスト、リル・ナズ・エックス(Lil Naz X)のランウエイデビューが最大のニュースだ。
ヒップホップ界“最強(最狂)”と呼ばれる彼は、そのスタイルにおいても大きな話題となり、音楽だけでなくファッション業界からも熱い視線が注がれてきた。そんな彼がランウエイデビューに選んだのは、スチュワート・ヴィヴァース(Stuart Vevers)=クリエイティブ・ディレクターが率いる「コーチ」だった。先週始まったリル・ナズのワールドツアーの衣装も、スチュワートが全面的にデザインしたという。
リル・ナズが着用したのはレザーのベストとショーツだが、目が行ってしまうのは、宝石のように輝くグルカサンダルとミニバッグだ。アメリカのZ世代なら1度は「クレアーズ(CLAIRE’S)」などで買ったことがあるだろう、ゼリーのような質感のアクセサリー。グリッターで、カラフルで、プレイフル。リル・ナズが身に着けることで、「コーチ」への興味・関心を高めるZ世代は多いだろう。
ピカピカのアクセサリーは、ボトムスが見えないくらいオーバーサイズのレザージャケットや60年代のツィッギー(Twiggy)をほうふつとさせるミニ丈のワンピースにも合わせられ、ランウエイはにぎわった。同じく頻出したアクセサリーは、フェザーやフリンジをあしらったロングネックレス。胸元だけでなく、背中さえ彩った。Y2Kムードの高まりで肌の露出が増えている世代に重宝がられそうだ。
若い世代にとっては懐かしいムードのバッグ&シューズ、今時なスタイルにぴったりのアレンジ自在なアクセサリーからも、「コーチ」が未来を見据え、Z世代に強くアプローチしていることがうかがえる。彼らと、さらにどう強くつながるのか?「コーチ」の挑戦は続く。