ニューヨーク・ファッション・ウイークの最終日、「マイケル・コース コレクション(MICHAEL KORS COLLECTION)」がショーを開催し、ハドソン川方面から秋の爽やかな風が吹き込むマンハッタンのミートパッキングエリアで「アーバンなリゾート」を描いた。
これは、都会とリゾートという対極にある言葉をコレクションのコンセプトとして比喩的に表現しているのではない。もともと実用的で折衷主義なブランドは今シーズン、アイデンティティをさらに深掘りし、文字通り「都会でもリゾート地でも着られるコレクション」を完成させた。
マイケル・コースは、ポストパンデミックの世界を旅して、「世界の大都市はどんどんリゾート化し、一方で高級リゾートがシティ化している」と語る。メディアへのプレスプレビューでは、「今、世界中でファッションのルールが変わっているのを知っているかい?」と問いかけた。ロンドンでは鮮やかな色のリゾートドレスにビーチサンダルの姿が増え、一方カプリなどのリゾートではスーツにヒールのシックな装いが楽しまれているという。「『この季節だから、この場所だからクルーズライン』なんてルールは、もう成立しないんだ」。その実感が、「アーバンリゾート」という今季のテーマに繋がった。
これまでのルールが変われば、持ち運ぶものも変わる。どのアイテムがいつ必要になるかわからないから、マイケルは旅先で「リモワ(RIMOWA)」の巨大なトランクを6つも持った女性に出会ったという。そこで、彼が提案するコレクションは引き続き、着回しが自由自在。「タイムレスで汎用性の高い」ものとなった。
洋服には引き続き、フリンジを多用した。袖や肩、スカートのヘムラインにあしらったフリンジは、今いるのが都会でもリゾートでも洗練のムードを醸し出す。パレオのようなスカートにジャケットのコーディネートは、ルールが崩壊した今のファッションシーンの象徴だ。またニットは、ショルダーにかけたり上半身を包んだりするためのアクセサリー。プルオーバーのセーターとしての使い方を想定していない。マイケルは「結んで袖を伸ばしちゃうなんて、もう止めたほうがいいんじゃない?」と話す。
カラーパレットは、ホワイトやブラックを基調に生き生きとしたポピーレッドを挟み、旅先のムードを盛り上げる。「人は着ると自信がもてる、強くなれるアイテムを着続ける。そういうファッションが、真のタイムレス」という。社会を生きる人は今、どんな気分でいるんだろう?そんな思考を続け、すぐに具現化してしまう実用性は、とてもアメリカンだ。