「バウト(BOWTE)」は2023年春夏にスタートするウィメンズブランド。ドゥロワー(DRAWER)などで経験を積んだデザイナーの靭江千草(うつぼえ・ちぐさ)が手がける。ウール生地の世界的産地として知られる愛知・一宮の虫文毛織の虫鹿勝博社長が新会社ボウトを立ち上げ、「バウト」を運営。そうした背景もあって、凝った素材と靭江が得意とするクラシカルなメンズテーラリングの要素が主張する。23年春夏は、ロンハーマン(RON HERMAN)、エイチ ビューティ&ユース(H BEAUTY & YOUTH)、イエナ(IENA)などの有力店を含む20社での卸販売が決まった。
老舗機屋が運営元ではあるが、虫文毛織の素材のみを使うわけではなく、インポートを含め「そのアイテムに一番適した素材」を使っているのがポイント。例えば、マルチチェックのダブルフロントのスーツは、英ウィリアム・ハルステッドの生地を使用。往年のデビッド・ボウイやミック・ジャガーのようなイメージで、上品ながらグラマラスに主張する。クチュールにも使われる仏産レースをはめ込んだドレスシャツは、イタリアの目の細かなコットン地で仕立てた。
他にも、プリントを載せたボウタイブラウスや仏マリア・ケントのツイード地のジャケットなど華やかなアイテムが豊富。一方でニットポロやサーマルトップス、サマーコーデュロイのショーツなど、よりカジュアルでリラックスしたアイテムも充実している。ただし、コーデュロイは最高級のエジプト超長綿を使用しており、コットンではないような鮮やかな発色が売りといったように、アイテムごとに語れるストーリーがいくつも詰まっていて、単なるカジュアルとは一味も二味も違う。
靭江デザイナーと虫鹿社長を引き合わせたのは、生地問屋クリップ クロップの小林広文社長だという。クリップ クロップといえばセレクトショップで絶大な支持を誇り、上質な生地を生かしたモノ作りが光る「オーラリー(AURALEE)」を手掛けている企業。「バウト」のデビュー展示会場には、助っ人的な立ち位置として小林社長の姿もあった。そんなネットワークもあって、有力ブランドに育ちそうな匂いがぷんぷんする。