「フォーエバー21(FOREVER21)」が、アダストリアがライセンス企画・生産・販売する形で2023年春に日本に再上陸すると発表された。日本から全店撤退したのは19年のこと。その後の経営破綻、買収を経て、米本国ではブランドは現在どうなっているのか。
経営破綻した「フォーエバー21」を20年に買収したのが、米ブランド管理会社オーセンティック・ブランズ・グループ(AUTHENTIC BRANDS GROUP以下、ABG)と、米の不動産投資信託会社サイモン・プロパティー・グループ(SIMON PROPERTY GROUP以下、サイモン)、同ブルックフィールド・プロパティー・パートナーズ(BROOKFIELD PROPERTY PERTNERS)の3社連合だ。買収金額は8110万ドルで、当時のレートで約87億5880万円。その後はABGと、ABGとサイモンが50%ずつ出資するスパーク・グループ(SPARC GROUP以下、スパーク)のもとで事業を進めている。同様に運営されているブランドには、「エディー バウアー(EDDIE BAUER)」「ブルックス ブラザーズ(BROOKS BROTHERS)」「エアロポステール(AEROPOSTALE)」「ノーティカ(NAUTICA)」などがある。ABGがブランドのライセンス管理を行い、日常的なブランド運営はスパークが担当。このスキームは、ABGは小売りによって保有するブランドの価値を上げることができ、サイモンにとっては自社モールのテナント救済的な意味合いがある。
買収から間もない20年2月末、それまでH&M北米社長として特にデジタル分野で手腕を発揮していたダニエル・クレ(Daniel Kulle)氏が、フォーエバー21のCEOに鳴り物入りで就任した。直後からコロナ禍が広がり、店舗閉鎖や従業員の一時解雇も行ったが、改革も断行。低価格商品だけでなく、99.99ドルなど比較的高額な商品の投入や、一部商品へのオーガニックコットンの導入、Z世代向けコラボ商品の企画、メタバースを活用したマーケティングなどに注力してきた。
「フォーエバー21」の実店舗は、現在アメリカ国内に約370、カナダ、中南米、中東、インド、中国に約200があるという。中国はABGと現地企業とのライセンス契約のもと、江蘇省の3級都市、台州に22年6月に出店。「フォーエバー21」の中国進出はこれが3度目で、1度目の08年は1年で撤退している。北京や上海に大型店を出して2度目の挑戦をしたのが11年だが、本国の経営悪化で19年に撤退していた。「ABGはライセンス管理がビジネスの核。アメリカ国外で『フォーエバー21』を展開する場合は、基本的には日本や中国と同様に現地パートナー企業とライセンス契約を結ぶ」と、アダストリアとの契約締結会見に登壇したABGのアジアパシフィック担当、ケビン・ソルター(Kevin Salter)バイスプレジデントは話す。
このようにブランド再建は進んでいるが、気になるのが改革の旗振り役であったクレ氏が21年10月に突然CEOを辞任した点だ。22年1月に、ステーショナリーグッズなどの小売りであるペーパーソース(Paper Source)CEOであったウィニー・パーク(Winnie Park)氏が新CEOに就いた。パーク新CEOは、ペーパーソース以前はLVMH傘下の免税店DFSなどに勤めていたというが、クレ前CEOに比べるとファッション小売りの世界で小粒な印象は否めない。有力業界人であるクレ氏が去ったことも影響してか、米「WWD」報道でもこのところ「フォーエバー21」関連のニュースはすっかり減っている。