ファッション

貴族的衣装さえ活動的に変えた「ディオール」と、ストイックな世界観の「サンローラン」 編集長のパリコレ真剣レビューVol.1

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 過去と対話し、現在を定義することで、未来に繋げるーー。

 これは、「ディオール(DIOR)」というメゾンのトップに立つデザイナーが果たすべき責務だ。そしてウィメンズのアーティスティック・ディレクター、マリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)は2023年春夏シーズン、この仕事を完璧にやってのけた。

 コレクションの出発点は、メゾンのアーカイブから見つけた一枚のスカーフだったという。1950年代の初頭に作られたスカーフには、メゾンの本拠地アヴェニュー・モンテーニュを中心にパリの地図が描かれていた。このイラストはトレンチコートなどに描かれ、ディオールがモンテーニュ通りからパリに、そして世界に広がっていった歴史を表現する。貴族的な衣装にもインスピレーションを得た今シーズンは22年の春夏からは一転、スカートの丈は長く、優雅に広がるからこそ、モンテーニュ通りから世界へ羽ばたいた50年代の「ディオール」の歴史が重なる。

 ただ「ディオール」のトップは、歴史を焼き直すだけの人物では務まらない。そこに自身の感性や想いをミックスし、「ディオール」でありながら、創業者ムッシュー・ディオールの「ディオール」とは異なる姿に昇華することが求められる。

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