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社長電撃辞任 「スノーピーク」の本業に死角はないのか【小島健輔リポート】

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 ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。アウトドア用品メーカー、スノーピークの山井梨沙社長の電撃退任は業界だけでなく社会的な注目を集めた。キャンプブームに乗って好調ぶりが報じられてきた同社だが、その本業には死角はないのか。財務情報を詳しく読み解いてみる。

 3代目の女性社長の突然の辞任理由を不倫による妊娠とわざわざ公式発表したスノーピークの内情は、よほど急いで社長を更迭する必要があったに違いない。にらんだ通り、直近の2022年12月期第2四半期累計(22年1月1日〜6月30日)の決算業績には深刻なつまずきが見てとれる。

異例の辞任劇の裏に何があったのか

 9月21日、スノーピークは仰天のIRニュースを発表した。以下はその一文のハイライトだ。

 「当社代表取締役社長執行役員である山井梨沙から、既婚男性との交際及び妊娠を理由として、当社及びグループ会社の取締役の職務を辞任したいとの申し出がありました。本日、当社はその辞表を受理し、臨時取締役会にて、現在代表取締役会長執行役員である山井太が本日付にて代表取締役社長執行役員を兼務することを決議いたしました」

 個人的な事情の妊娠を「既婚男性との交際」とまで暴露して辞任の理由とした公式発表に、きな臭いものを感じた業界人も少なくなかったと思われる。疑い深い私など、よほど目を背けさせたい経営上の危機が存在するに違いないと即座に同社のIR情報を洗い始めた。そしたら、やはり急激な業績の暗転を示す指標がいくつも出てきた。

 別に隠していたわけではなく、8月12日に発表した22年12月期第2四半期(中間)決算と通期連結業績予想の下方修正で露見していたことばかりだが、百戦錬磨の先代が社長に復帰して陣営を立て直す間、別のスキャンダルに世間の関心を引きつけておきたかったのかと疑いたくもなる。IRニュースという極めて公式な発表なのだから、実はセクハラ行為の責任を取らされたENEOSの代表取締役会長のように「一身上の都合」とだけ発表すれば済むものを、わざわざ「既婚男性との交際及び妊娠」とまで暴露したのは相当の思惑があったと腹を探られてもやむを得まい。

 実際のところ、マーケットは8月12日の高値2746円から中間決算開示後の週明け15日の始値は2244円と落ち込み、9月8日の安値2051円まで25.3%も落ち込んだが、社長交代発表の直前9月21日の終値2169円から翌22日の終値は2202円と株価には全く響かなかった。9月26日には2303円の高値まであったから、マーケットには辞任を歓迎する空気さえあった。

 マーケットや業界の目を背けさせたいほど深刻な業績の暗転があったのか、まずは22年12月期の中間決算を前期の中間決算と比較してみよう。

向こう傷か?深刻なつまずきか?

 前中間期と今中間期を比べると売り上げは34.5%も増加し、粗利益率も56.1%と1.3ポイント伸び、販管費率は39.8%と逆に1.2ポイント圧縮されたから、営業利益は58.6%も増えて利益率は16.3%と2.5ポイントも跳ね上がり、経常利益は50.9%、純利益は51.4%も増えた。一体どこがつまずきなんだと訝られるだろうが、問題はここからだ。

 売り上げは34.5%増なのに製品在庫は155.6%増(2.56倍)、仕掛かり品や原材料も併せた全在庫も2.42倍に膨れ上がり、棚資産回転は145.0日と前中間期から66.7日も延び、売掛金も42.6%増加と回収もやや延びている。買掛債務の回転日数は38.1日とほとんど変わらなかったから、結果、CCC(Cash Conversion Cycle)は154.0日と69.2日も延びて必要運転資金は133億5500万円と前中間期の2.44倍に急増し、純資産対比の運転資金率は前中間期の45.3%という健全水準から90.1%というイエローカード水準へ一気に悪化している。

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