「WWDJAPAN」には美容ジャーナリストの齋藤薫さんによる連載「ビューティ業界へオピニオン」がある。長年ビューティ業界に携わり化粧品メーカーからも絶大な信頼を得る美容ジャーナリストの齋藤さんがビューティ業界をさらに盛り立てるべく、さまざまな視点からの思いや提案が込められた内容は必見だ。(この記事はWWDジャパン2022年9月26日号からの抜粋です)
いわゆる“パケ買い”は、化粧品の生命線の一つ。おしろいや口紅の容器が美術品のような佇まいだった時代から、おそらく未来に至るまで、そこは全く変わらない。しかし、化粧品のパッケージがアニメなどのキャラクターなどと初めてコラボレーションを果たしたときは、さすがに驚いたもの。楽しいような楽しくないような、少々複雑な思いを抱いたのを覚えている。
宝石箱のような19世紀のコンパクトには美容の女神が微笑んでも、正体不明の“妖怪”的キャラが描かれたコンパクトには、中身と外見のあまりのギャップに戸惑った人も多いはず。ファンにとっては何がなんでも欲しいもの、それだけで“コラボ”は成功だけれど、じゃあ化粧品って一体何なのだろうと考えてしまうような、ちょっと意地悪な意識が生まれたりした。
ただ最近になって、誰にとっても納得のいく、そして化粧品コラボの意義が改めてクリアになるような、そうした真の合作的試みが目立つようになってきた。例えば昨今話題の中国コスメ「ズーシー」の本気のコラボ。なんと世界最大の博物館、英国“大英博物館”とコラボしたシリーズを次々に発表しているのだ。大英博物館がまぁよくも共作を許したと思うような、れっきとしたプチプラブランド、プチプラ価格。ところが桁が違うのではないかと一瞬目を疑うほど美しくクオリティーの高い仕上がりは、業界をひそかに震撼させたに違いない。こういう徹底ぶりはさすが中国、化粧品では明らかに後発だけあって、スケールの違う挑戦に打って出ている印象。今や世界のあちこちでブレイクを見せている。例えば、エジプトシリーズでは、クレオパトラやエジプトの神々を描いた七宝焼きを思わせるゴージャスなパッケージを開くと、まさにクレオパトラをほうふつとさせる16色の標本的な色ぞろえ!顔までコラボできるのだ。さらに息をのんだのが、口紅の表面にエジプトのトーテムヒエログリフフレスコ画の繰り返しデザインを細かく緻密に彫刻したリップスティック(1980円)。ここまでやってしまうこと自体、まさに脅威。化粧品コラボの見事な見本を見せつける極めて重要な例である。
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