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小田急跡地のビルに百貨店は入らない!?

 再開発により新宿西口のハルクに移転した小田急百貨店ですが、いわゆる婦人服、紳士服の売り場はありません。化粧品、食品、特選に絞るとのこと。もちろん、全体の売り場面積が8割減になっているんだから仕方のないことですが、百貨店ってこれからどんどんそうなっていくんでしょうか。

 さらに驚いたのは、小田急百貨店跡地に2029年度に竣工する高層ビルに百貨店が再び入るかは「白紙」と店長が話している点。そうは言っても入るだろうとは思いますが、これから7年間の消費行動や市況の変化を見つつ、そのとき最適な百貨店のあり方を探っていくぞということなんでしょうね。

「WWDJAPAN」副編集長
五十君 花実
NEWS 01

小田急百貨店、引っ越して再スタート 売り場面積は8割減

 小田急百貨店新宿店は4日、新宿西口ハルク(以下、ハルク)に移転オープンした。新宿駅西口の再開発に伴い、2日に営業終了した本館から一部の売り場を動かした。本館で3万平方メートルだった売り場面積は6000平方メートルに縮小。化粧品、食品、ラグジュアリーブランドなどに特化した品ぞろえで再スタートを切る。

 ハルクへの移転に伴い、本館で大きな面積を占めていた婦人服や紳士服などアパレルの取り扱いをやめた。同社取締役の林幸一店長は「苦渋の決断だった。限られた面積でアパレルの満足できる展開はできなかった」と説明する。コンパクトな売り場のため、女性にターゲットを定めて、カテゴリーも絞り込んだ。

 1階に「シャネル」「サンローラン」「カルティエ」「オメガ」「フランクミュラー」「ミキモト」などのラグジュアリーブランドや時計・宝飾を入れた。1階入口前の一等地には「グッチ」が11月下旬に開店する。地下1階は化粧品と和洋菓子、地下2階は生鮮食品や惣菜の売り場にした。中2階にはゴルフウエアが入り、2階は婦人のバッグ、靴、服飾雑貨などで構成する。テナントとして元々2〜6階で営業しているビックカメラを挟んで、7階に宝飾、メガネ、ギフトサロン、学生服などを入れた。

 本館の建物は3日から解体工事が始まり、親会社である小田急電鉄や東京メトロによって商業施設やオフィスが一体となった高層ビルが2029年度に竣工する。林店長は「建て替え後(の新しいビルに小田急百貨店が入るか)は白紙」としているが、一方で「(本館の終了発表後)お客さまから建て替え後に期待する声が多い」とも話す。別の同社幹部は「もちろん(建て替えられる)7年後を見据えて営業している」と明かす。売り場面積は大幅に縮小するものの、売上高の2割を占める外商の機能を残したり、デジタルによる顧客との接点を強化したり、先を見据えた施策を打つ。

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NEWS 02

ファミリーマートがオーガニックコスメに本気の理由 マッシュ開発の「ミティア オーガニック」発売

 マッシュビューティーラボ(以下、マッシュ)は4日、オーガニック化粧品のプライベートブランド(PB)「ミティア オーガニック(MITEA ORGANIC)」を全国のファミリーマート店舗で発売した。同社のPB商品がコンビニで販売されるのは初めて。全国で1万6600店舗を展開するファミリーマートでの商品販売は同社にとって大きな商機であると同時に、オーガニックコスメ市場そのものを拡大するチャンスになる。一方、年間の総売上高2兆8000億円を超える(22年2月期)ファミリーマートにおいて、化粧品カテゴリーはおよそ100億円の規模。売り上げのボリュームとしては決して大きくないが、ファミリーマートはここにどのような可能性を見出すのか。

 「ミティア オーガニック」は北海道から沖縄まで店舗網があるファミリーマートで展開する。マッシュの従来品とは製造ロットもケタ違いであり、大きなスケールメリットを発揮できる。スキンケア4種、リップ1種をラインアップするが、同社の独自基準に準拠したナチュラルオーガニック処方でありながら、価格は全て税込2000円以下を実現した。

 ファミリーマートの1日の来店客数は約1500万人。公式アプリ「ファミペイ」アプリのダウンロード数は1300万を超える。それらから抽出される膨大な顧客データを活用できるのもメリットだ。 マッシュの主力業態「コスメキッチン(COSME KITCHEN)」「ビープル(BIOPLE)」などの店舗でも取り扱うため、オーガニックコスメに親しんだ客からの濃度の高いリアクションも集まる。「質と量」のフィードバックを基に、発売後も品質や成分の改良を繰り返す。「コンビニで売る物も、これからの時代は『高い品質』『環境への配慮』が消費者に選ばれる条件の1つになる」とファミリーマートの細見研介社長。 「ミティア オーガニック」でも、輸送の梱包材には再生紙を使用し、店頭でそのまま陳列什器として使用できるデザインの工夫を施す。

コンビニ店舗をメディア化
商品には「品質」「ストーリー」が必要

 ファミリーマートは「店舗をメディア化する」という方針の下、レジ付近にデジタルサイネージの設置を進めている。22年6月時点で3000店舗に設置しており、23年度中に設置可能な全店舗への設置を予定している。細見社長は「ECの台頭で、消費者はあらゆるものを家にいながら手に入れられるようになった。リアル店舗は見たり、触ったりといった体験や、足をわざわざ運ぶだけの付加価値が必要な時代になる。コンビニもその例外ではない。店舗は情報や商品価値の発信拠点に変えていく」と語る。サイネージでは、取り扱い商品の販促プロモーションや、ここでしか見られないアーティストやアニメなどのエンタメコンテンツも流す。全国20万人のストアスタッフの役割意識も変える。「効率・スピード重視の対応から、商品情報をかみ砕き伝えるアンバサダー(伝道師)になっていただきたい。陳列する商品一つ一つにストーリーを持たせ、お客さまにはっきりした目的意識を持って来店してもらえる品ぞろえにする」。

 あらゆる消費者の生活圏内にあるコンビニで、手ごろな値段かつ高品質な日用品が手に入るようになれば、客の新しい来店動機をつくることができる。同社がマッシュと組み、高品質なオーガニックコスメの開発に取り組んだ本気度の理由もここにある。

 すでに衣料品では先鞭を付けている。「ファセッタズム(FACETASM)」を手掛けるファッションデザイナーの落合宏理と共同開発した、Tシャツや靴下など軽衣料や肌着を中心とした衣料品シリーズ「コンビニエンスウエア(CONVENIENCE WEAR)」を昨年春から販売し、一定の成功を収めている。体形や性別に縛られないデザインやサイズ展開、タフで長く使える素材など、これまでのコンビニ衣料品にはない付加価値を加えた。映画「ストレンジャー・シングス(STRANGER THINGS)」とのコラボでも話題生んだカラフルなソックスは、すでに累計販売700万足を突破した。

 化粧品でも、ノイン(東京都、渡部賢社長)が開発し、20年11月からファミリーマート限定で取り扱うメイクアップブランドの「ソポ(SOPO)」がSNSなどを中心に、若い女性の間で話題となっている。

 「ミティア オーガニック」はこれらに続く成功事例となれるか。マッシュホールディングスの近藤広幸社長は、「(コンビニでの商品展開は)7年ほど前から思い描いていた」と明かす。「自分自身、肌があれやすく、なかなか合う化粧品が見つからなかった。しかしオーガニックコスメと出合い、人生が変わった。オーガニックコスメを大衆に伝え広めることは、私の夢になった」と語り、「(『ミティア オーガニック』は)これまでにないスケールのチャレンジでプレッシャーを感じているが、夢を実現させるチャンスでもある。焦らず、じっくりとブランドへの共感を育てていきたい」と前を見据える。

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