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連載 小島健輔リポート

アパレルの「勝ちの構図」はこうして築け【小島健輔リポート】

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ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。コロナを経たアパレル業界では企業によって優勝劣敗がはっきり分かれつつある。経営の戦略戦術の前に、勝敗を分ける根本的な理由があるのではないか。詳しく考察してみよう。

 アパレル業界は慢性的過剰供給で大半が四苦八苦しているイメージがあるが、中には売り上げも利益も順調に伸ばしている会社もあるし、ごく一部とはいえ濡れ手に粟のぼろ儲けを謳歌している会社さえある。その明暗を分けているのは一体何なのか、有体に言えば「勝ちの構図」と「負けの構図」ではないだろうか。

無理なく儲かる損益のバランスを築く

 利益は売り上げから売上原価と販管費を差し引いていくら残るかという単純な損益計算で、大枠は粗利益と販管費のバランスで決まる。「売り上げは全てを癒す」とはいっても、損益のバランスを崩しては成り立たない。元より販管費が高く粗利益が薄ければ利益は残らないから、販路ミックスで流通コスト(賃料や手数料、販売費や物流費など)を抑制し、調達スキームで原価と需給ギャップを抑制して粗利益を高め、「無理なく儲かる構図」を築いていくべきだ。

 損益の構図は固定費と変動費のバランスで二次関数的に変化するから、売り上げの水位が高く固定費(率)の水位が低い販路や出店立地を一つ一つ積み上げていくことが肝要だ。目先の条件に惑わされて固定費水位の高い出店をしたり、バランスの苦しい店舗や販路を放置しては儲かる構図から遠のいていく。販路資産は損益を見て入れ替えていくものなのだ。

 通期や半期で締めた結果、損益は許容水準でも、月度の売り上げや在庫、損益が極端に振れてリスクや資金負担がかさんだり、締め支払い条件で資金回転(CCC/Cash Conversion Cycle)が圧迫される場合があるから、売り上げ・在庫・資金繰りの流れに無理のない構図であることも必要だ。それには販路ミックスに加え、年間を通して売り上げと在庫が無理なく流れるMDのリズムが問われる。

無理なく流れるMDのリズムを築く

 アパレルの場合、売り上げも利益も冬期と春期に偏ることが多く、在庫は実需期前にピークに達するが(売り減らし体質)、秋期や夏期の需要を喚起するMDを組んで在庫と売り上げを平準化できれば在庫回転が滑らかになり、値引きや残品のロスが減って粗利益が高まり営業利益も伸びる。

 在庫と売り上げを平準化できれば物流も人時配置も効率化できるから、販管費が抑制されて営業利益がさらに伸びるし、2月や8月の端境月の売り上げを嵩上げできれば、最低補償家賃の思わぬ負担で青ざめることもなくなる。毎月の決済に要する運転資金も平準化されるから、資金繰りのストレスや金利負担も軽減される。

 在庫を積んでピーク月の売り上げを伸ばすという選択もあるが、目論見通りに売れなければ翌月の仕入枠が圧迫されて回転が滞り、値引きロスがかさんで利益も圧迫されるから限界がある。委託仕入れや消化仕入れなどサプライヤーとリスクを分担すれば可能だが、ピーク売り上げを押し上げる催事的ブースターと考えるべきだろう。

 紳士服チェーンやジーンズショップなど従来のMD展開では売り上げも在庫も山谷が大きく、一毛作MDのまま無理に売り上げを伸ばそうとすると値引きロスや売れ残りが肥大するから、発想を変えた(当然にサプライも異なる)二毛作MDで平準化を徹底するべきだ。紳士服やジーンズの二毛作アイテムとしてはアウトドアアイテムやスポーツアイテムに加え、エスニックウエアやインティメイトウエア(肌着/部屋着)も有望ではないか。

タイムラグ最短化へ両面のスキーム

 MDのリズムが最適化されても調達と販売のタイムラグが長ければ、在庫と売り上げの発生タイミングがズレて需給ギャップも広がり、在庫回転も消化歩留まりも期待値から遠のいて資金繰りも圧迫される。それを回避するには在庫発生と売上発生の時差を最短化するべきで、調達スキームと販売スキームの両面の仕掛けが必要だ。

 調達スキームではDX(デジタルトランスフォーメーション)などによる小ロット反復・短納期オンデマンド調達が理想だが、遠く離れた海外産地での低コスト計画生産とは相入れず、サプライヤーとの製販同盟によるVMI(Vendor Managed Inventory)調達の方が現実的だ。初期陳列量を一括投入した後はデータ共有したサプライヤーが倉庫在庫と追加生産で自動補充するという製販同盟で、定番商品がほとんどのワークマンなどでは台帳型(同一商品補給)が定着しているが、トレンド品や服飾雑貨ではリレー型(類似デザインを切り替え補給、心太型とも言う)も多い。

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