「シャネル(CHANEL)」は10月11日、ビューティのグローバル クリエイティブ パートナーにメイクアップアーティストのアミィ・ドラマ(Ammy Drammeh)、セシル・パラヴィナ(Cecile Paravina)、ヴァレンティナ・リー(Valentina Li)の3人を起用すると発表した。若手アーティストからなるコミュニティー「コメット コレクティヴ(COMETES COLLECTIVE)」創設に伴うもので、同コミュニティーは10月に始動。メンバーはシャネル メークアップ クリエイティブ ストゥディオと協働し、製品開発に携わる。初のコレクションは2024年1月に発表する予定だ。複数人が1つのブランドのカラーコスメコレクションを手掛けるのは、現在の業界において珍しい。「シャネル」ではこれまで、グローバル クリエイティブ メークアップ&カラー デザイナーとしてルチア・ピカ(Lucia Pica)が製品開発に携わっていたが、彼女は現在「バイレード(BYREDO)」のクリエイティブイメージ&メイクアップパートナーを務めている。
3人のアーティストの背景は多様性に富む。フランス出身のセシルは、現在パリを拠点に活動。アントワープ王立芸術アカデミーでファッションデザインを学んだ後、メイクアップに転向。直近では、「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」や「オフホワイト c/o ヴァージル・アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」のコレクションでメイクアップのリードを務めた。20年に英国ファッション評議会が世界の若きクリエイティブ・タレント100人を選出する「ニュー・ウェーブ(NEW WAVE)」に選ばれている。中国広西チワン族自治区出身のヴァレンティナは、北京とパリでメイクアップを学び、14年から15年に「メイクアップ フォーエバー(MAKE UP FOR EVER)」で本格的なトレーニングを受け、16年にパリ・ファッションウイークに初参加。現在は中国を拠点に活動する。これまでに「アレキサンダー ワン(AL EXANDER WANG)」や「ナイキ(NIKE)」のキャンペーンを手掛けた。ロンドンを拠点に活動するエイミーは、ガンビア共和国とスペインをルーツに持つ。「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUTTON)」のショーや「ディオール(DIOR)」「グッチ(GUCCI)」「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」などの広告キャンペーンを手掛けている。18年と19年の「ニュー・ウェーブ」に選ばれた。彼女は現在、黒人やアジア人、その他少数民族のクリエイティブ産業における機会を増やし、公平性を確立するためのイニシアチブ「メンタリング・マターズ(Mentoring Matters)」に参加している。
こうした新世代の才能が集まる「コメット コレクティブ」は、新しい視点の加入による創造性の加速を目的に創設。卓越したビジョンと、ブランドと共鳴する価値観を持つアーティストを選出した。「コメット」はフランス語で「彗星」を意味し、無限の可能性から命名。各メンバーは、個性的なビジョンを基にシーズンのクリエイションなど共通のテーマの下で協働。独自の方法でブランドの色やアイコンを再解釈し、それぞれが持つ知識を共有し共同作業を通して発展させる。ブランドは「コメット コレクティブ」について、「この革新的かつインクルーシヴなコンセプトにより、シャネル メークアップ クリエイティブ ストゥディオの新たな可能性が広がる」としている。
「シャネル」のメイクアップのクリエイションは、1969年にココ・シャネル(Coco Chanel)の直接採用によりディクレイターに就任したドミニク・モンクルトワ(Dominique Moncourtois)と、80年にディレクターに就任したハイディ・モラウェッツ(Heidi Morawetz)が約30年に渡り2人体制で指揮した。その後、2008年から13年までは、現在「ディオール」のクリエイティブ&イメージディレクターを務めるピーター・フィリップス(Peter Philips)が担い、15年から6年間を現在「バイレード」を手掛けるルチア・ピカが指揮した。
近年はビューティ業界で若手メイクアップアーティストが頭角を表している。「ゲラン(GUERLAIN)」は昨年、メイクアップの新クリエイティブ ディレクターにヴァイオレット・セラ(Violette Serrat)を任命。彼女はインスタグラムのフォロワーが46万超えのインフルエンサーで起業家としても知られる。「ジバンシイ(GIVENCHY)」も今年、イギリス人メイクアップ・アーティストのトム・ウォーカー(Thom Walker)の起用を発表している。