コロナ禍は東京のコム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)本社でショーを行っていた「ノワール ケイ ニノミヤ(NOIR KEI NINOMIYA)」も、2年半ぶりにパリ・ファッション・ウイークに戻ってきた。ショー会場に選んだのは、サントノレ通りの歴史あるオラトワール・デュ・ルーヴル教会。神聖な空気に包まれた空間は、今季のテーマである「ミスティック・フォース(神秘的な力)」にふさわしいロケーションといえる。
「小さな頃、変わったモノや不思議なモノを見た時に感じる高揚感やポジティブなエネルギーを服で表現したかった」と語る二宮啓デザイナーが見せたのは、異世界の旅へといざなうようなコレクションだ。ファーストルックは、プラスチック板をカットした小さなピースをつなぎ合わせたチューブで、王冠のようなフォルムを表現したドレス。その後も筒状にした白黒のオーガンジーで作る大胆なループフリンジやターコイズブルーの編み込み、小さなメタルボールをあしらったワイヤーやテグス、無数のフラワーピースを飾ったPVC製のボールの連結など、“生地を縫い合わせること”だけにとらわれない彼らしいアイデアや手法でドラマチックなフォルムを描いていく。「ロエベ(LOEWE)」とのコラボも記憶に新しい陶芸家の桑田卓郎が制作したヘッドピースが幻想的なムードをさらに高め、終盤に披露した細く裂いた白いウィッグがフワフワ浮かぶルックは神々しささえ漂う。
一方、スタイルのベースに取り入れたのは、クラシックな英国テーラリング。ノワール(黒)に加え、グレンチェックやハウンドトゥースのスーツ地で仕立てた細身のコートやクロップドジャケット、ショートパンツ、そして白いポプリンのシャツが、幻想の中に貴族的なムードを与える。そして足元を飾るのは、英国発の「ハンター(HUNTER)」とのコラボによるラバーブーツ。「ノワール ケイ ニノミヤ」の象徴的なデザインの一つであるリングハーネスやフラワーモチーフのパーツをあしらったモデル4型を提案する。ブランドの世界観をしっかり表現しながら、ウエアラブルなアイテムを織り交ぜているところも好印象だ。
ショー後のバックステージで、久しぶりに参加したパリコレについて聞かれた二宮デザイナーは、「やっぱりいいですね。久しぶりにいろんな人と会えたり、フィジカルに仕事をして、世界中から集まるさまざまな価値観や文化を持った人の前で発表できたりする、すごく価値のある場所だと思う」とコメント。前向きな創作意欲にあふれるコレクションで、復帰を待ち望んでいた観客の期待に応えた。