「ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」は、完全デジタル開催となった2021-22年秋冬シーズンを除き、コロナ禍もパリでのショー発表を続けてきた。パンデミック真っ只中の20年秋に取材した際、山本耀司デザイナーは「パリでショーを行うことは自分の仕事。(初参加した1981年から)40年近く続けているから、自分の存在理由だ」と語っていたが、そのブレることのない姿勢で、今季も黒のエレガンスを見せた。
米「WWD」によると、今季の出発点となったのは「17〜18世紀に男性が女性にコルセットや極端に小さな靴を強要し、人形のように扱っていたことへの嫌悪感」だという。そして、足かせとなっていたような歴史的な衣服を分解することで、女性の自由を表現した。序盤は、いくつもダーツを取ることで美しいボディーラインを描いたテーラリングジャケットだ。フロントや肩には、生地のパネルがめくれて剥がれ落ちるようなデザインを施し、広がる裾に切り込みをプラス。下には、柔らかな細身のロングスカートを合わせる。そんな柔らかな生地感は、体にしっとり沿い、裾が風に揺れるシャツドレスやコート、分解されたパーツをいくつも組み合わせて作ったようなアシンメトリードレスにも見られるもの。黒を中心としたアイテムを、軽やかに仕上げているのが印象的だ。
そして、終盤のドレススタイルはオールブラックでありながら、より装飾的に。提案したのは、レースを取り入れたファスナー開閉のコルセットとアシンメトリーなヘムが重なり合うスカートのルックや、バロック調の有機的な形状にカットされたピースをつなげて、シワ感を加えた生地と組み合わせたドレスなど。そこには、はかなさと優美さが共存する。